星野夏子は病室を出たところで、薬を取りに戻ってきた梅田さんとちょうど出くわした。
「星野監督、斉藤社長はどうですか?」
梅田さんは心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。彼の家族か秘書に連絡を取る方法を考えてくれない?ここをしばらく見ていてくれる?明日の朝は休暇を取らせるから、問題ない?」
星野夏子は淡々と尋ねた。
梅田さんは頷いた。「監督がお忙しいなら先にお帰りください。田村さんなら彼の秘書への連絡方法を知っているはずです。一日中忙しくて疲れているでしょうから」
「うん、こちらはよろしくね」
星野夏子がそう答えると、ポケットの携帯が鳴り始めた。藤崎凌子からの電話だった!
その時、病室内では、斉藤礼が星野夏子が病室を出た瞬間にゆっくりと目を開け、薄暗い光の中で彼女が注いでくれた湯気の立つ水が置かれた枕元に顔を向けた。妖艶で青白い顔に、かすかに和らいだ表情が浮かんだ。