星野夏子は病室を出たところで、薬を取りに戻ってきた梅田さんとちょうど出くわした。
「星野監督、斉藤社長はどうですか?」
梅田さんは心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。彼の家族か秘書に連絡を取る方法を考えてくれない?ここをしばらく見ていてくれる?明日の朝は休暇を取らせるから、問題ない?」
星野夏子は淡々と尋ねた。
梅田さんは頷いた。「監督がお忙しいなら先にお帰りください。田村さんなら彼の秘書への連絡方法を知っているはずです。一日中忙しくて疲れているでしょうから」
「うん、こちらはよろしくね」
星野夏子がそう答えると、ポケットの携帯が鳴り始めた。藤崎凌子からの電話だった!
その時、病室内では、斉藤礼が星野夏子が病室を出た瞬間にゆっくりと目を開け、薄暗い光の中で彼女が注いでくれた湯気の立つ水が置かれた枕元に顔を向けた。妖艶で青白い顔に、かすかに和らいだ表情が浮かんだ。
彼は瞳を数回きらめかせてから、ゆっくりと体を起こし、ベッドサイドのランプをつけた。部屋は一気に明るくなった。彼はその水を手に取り、もう一方の手で彼女が枕元に置いていった書類を取り、黙って読み始めた。
彼女の字は流れるような美しさで、彼女自身のように清楚で上品だった……
外はすでに明るい灯りで輝き、色とりどりの光がこの都市をより美しく魅惑的に彩っていた。星野夏子は帝光娯楽クラブへ向かう道を車で疾走していた。
須藤菜々と藤崎凌子が集まっていて、彼女を誘っていたのだ。
その時、遠く離れた東浜市の輝く街頭で、藤崎輝の端正で背の高い姿が薄暗い街灯の下を通り過ぎ、道端で足を止め、真たちが車を持ってくるのを待っていた。
足を止めるとすぐに、彼はポケットから携帯電話を取り出し、藤崎奥さんに電話をかけた。
彼の電話を受けたとき、星野夏子は車を運転中だった。彼女はイヤホンを付けてから電話に出た。
「奥さん……」
彼の感情的な低い声がすぐに伝わってきた。かすかに気づくか気づかないかほどの淡い思いが隠されていた。
「うん、ちょうど凌子と菜々たちと食事に行こうと思っていたところよ。夕食は食べた?今日は何をしていたの?」
彼の声が落ち着くと、藤崎奥さんはここ数日と同じように彼のスケジュールを報告させ始めた。