車が徐々に遠ざかり、大通りの果てに消えるまで見送った星野夏子は、ようやく視線を戻し、車に乗ろうとしたところ、ポケットの携帯電話が鳴り始めた。
取り出して見ると、大野恵子からの電話だった。急いで来るようにとの催促で、星野夏子は簡単に返事をして電話を切り、すぐに車を走らせた。
ニューセンチュリープラザに到着すると、大野恵子はすでに広場の端にあるベンチに座って待っていた。星野夏子が驚いたのは、藤崎悠も一緒に来ていたことだった。
「おじいちゃん、おばあちゃん!長く待ってた?」
星野夏子は話し込んでいた老夫婦に声をかけ、すぐに彼らの側に来た。
呼びかけを聞いて、老夫婦は会話を止め、顔を上げて声のする方を見た。駆けつけてきた星野夏子の少し赤らんだ顔を見て、大野恵子と藤崎悠は目を合わせてから笑いながら言った。「大丈夫よ、ご飯は食べた?」