第191章 疑念を抱く(一)

車が徐々に遠ざかり、大通りの果てに消えるまで見送った星野夏子は、ようやく視線を戻し、車に乗ろうとしたところ、ポケットの携帯電話が鳴り始めた。

取り出して見ると、大野恵子からの電話だった。急いで来るようにとの催促で、星野夏子は簡単に返事をして電話を切り、すぐに車を走らせた。

ニューセンチュリープラザに到着すると、大野恵子はすでに広場の端にあるベンチに座って待っていた。星野夏子が驚いたのは、藤崎悠も一緒に来ていたことだった。

「おじいちゃん、おばあちゃん!長く待ってた?」

星野夏子は話し込んでいた老夫婦に声をかけ、すぐに彼らの側に来た。

呼びかけを聞いて、老夫婦は会話を止め、顔を上げて声のする方を見た。駆けつけてきた星野夏子の少し赤らんだ顔を見て、大野恵子と藤崎悠は目を合わせてから笑いながら言った。「大丈夫よ、ご飯は食べた?」

星野夏子は軽く頷いた。「藤崎輝と一緒に深田邸に行ってきたの。母が沢山のごちそうを作ってくれたわ」

「じゃあ輝は?見当たらないけど?」

大野恵子はそう言いながら、思わず頭を上げて辺りを見回したが、藤崎輝の姿は見えなかった。

「市役所の方に行くって言ってたわ。夜は直接藤崎邸に帰るって。おじいちゃんとおばあちゃんはどこか見て回りたいところある?」

星野夏子は前に出て藤崎悠に杖を渡しながら尋ねた。

藤崎悠は星野夏子から杖を受け取り、優しく微笑んだ。「ここが営業を始めてから、ずっと見に来る時間がなかったんだ。先日、おばあちゃんがお母さんと話していて、ここがとても良いと聞いたから、おばあちゃんと一緒に見に来たんだよ」

「この人ったら、先日大野会長が新しく仕立てた唐装を着ているのを見て、自分も気分を変えようと思って、唐装を何着か作ろうとしているのよ。今日はそれを見に来たの。もう年寄りなのに、まだ自分の色気のある性格は直らないわね!それなのに、もっともらしく言い訳して!」

藤崎悠の言葉が終わるや否や、大野恵子はすぐに目を回し、片手で星野夏子の手を取り、我慢できないという様子で皮肉を言った。