037章 署名して、相続権を手放せ!

星野夏子の部屋は二階にあった。星野夏子は記憶を頼りに方向を確認し、すぐに見つけた。通路で彼女を見かけた何人かの使用人たちは驚いた表情を浮かべていたが、星野夏子は彼らを気にしなかった。

星野陽の書斎の前で、星野夏子はしばらく立ち尽くしてから、やっと手を上げてドアをノックした。しかし、何度ノックしても中から返事がなかったため、仕方なくドアを押し開けた。

部屋全体が少し暗く、星野夏子はドアの前に立ったまましばらく見つめ、ようやく中の光に目が慣れてきた。部屋を見回し、最後に前方の床から天井までの窓の前にあるソファに視線を止めた。

考えた末、慎重に歩を進めた。

案の定、ソファには目を閉じて眠っている星野陽がいた。

痩せこけた体、白髪交じりの髪、疲れた様子で、呼吸も少し苦しそうに聞こえた。まるで風の中のろうそくのように、いつ消えてもおかしくないほど弱々しく見えた。