第539章 重点保護対象(三)

車は微かな涼しさを引きながら静かな道路を通り抜け、すぐに道端の木蓮の木の下でゆっくりと停車した。

「星野監督、青山墓地に着きました!」

前方の季野桐子が車を停めた後、後部座席で物思いに沈んでいる星野夏子に静かに声をかけた。

桐子の声を聞いて、夏子はハッとして我に返り、窓の外に目をやると、視界に入ってきたのは上方に広がる静かな墓石群だった。

「ありがとう、ここで待っていて。私一人で上がるわ」

夏子は大きな白いヒナギクの花束を抱えながら、ドアを開けて降りた。

この位置からは上の墓石の様子が見えることに気づき、桐子は頷いた。「わかりました、星野監督、お気をつけて」

夏子は淡い微笑みを返すと、上へと歩き始めた。桐子も車から降り、車の傍で待機しながら、夏子の姿を目で追い続けた。

この墓地の墓守はよく掃除をしているので、道を歩いていても、数枚の落ち葉以外は見当たらず、地面も墓石と同様にほぼ埃一つない状態だった。

夏子は階段を上り、記憶の中の道筋をたどって角を曲がると、目に入った人影に大変驚いた!

橋本楓?

なぜ彼がここに?

深い色の体にフィットしたスーツを着て、一人静かに星野陽の墓石の前に立っていた。横顔から見ると、その表情には寂しさと荒涼とした雰囲気が漂い、じっと動かずに立っていて、かなり長い間そうしていたようだった!

彼が来るとは思わなかった。来るとしても、星野心のはずなのに……

夏子が立ち止まって彼を見ていると、楓も何か気づいたようで、無意識に振り返り、案の定、夏子を見つけた。

黒い長いドレスを身にまとい、髪も軽く上品に結い上げていた。全体的に見ると一層痩せて細くなり、白く繊細な顔立ちからは冷たさと気品が漂っていた。一見すると以前と同じように見えたが、よく見ると多くのものが変わっていることに気づいた。

彼女を見て、楓も当然驚いていた。彼は車で小道を通りかかった時、紙の元宝などを売っている人を見て、今日がお盆だと知ったのだ。星野山が海外にいることを思い出し、星野陽も以前は彼に対して悪くなかったので、訪れることにしたのだった。

夏子はほんの少し躊躇しただけで、そのまま近づいていった……

「夏子、君が来るとは思わなかった……」