大野秘書が星野心の病室に入った時、心はやつれた様子でベッドの頭に寄りかかり、手に持った携帯電話で電話をかけていた。顔には不安と慌てが満ちあふれ、この時病室には彼女一人だけだった。
電話は橋本楓にかけているようだったが、橋本楓の携帯電話はずっと電源が切られていて、誰も通じなかった。
「心さん!」
大野秘書はドアをノックしてから、ベッドの方へ歩いていった。
「大野秘書!どうしてここに?楓は?彼も来たの?」
心は大野秘書の声を聞くと、すぐに顔を向け、大野秘書を見た瞬間、暗かった目が急に輝き、布団をめくってベッドから降りようとした。しかし、動いた途端、その手に突き刺すような痛みが走り、彼女は耐えられずに痛みの声を上げた!
それはあの日、星野夏子と揉み合って怪我をした手だった。脱臼し、筋や骨も傷つけていて、この数日間ずっと苦しんでいた。