大野秘書が星野心の病室に入った時、心はやつれた様子でベッドの頭に寄りかかり、手に持った携帯電話で電話をかけていた。顔には不安と慌てが満ちあふれ、この時病室には彼女一人だけだった。
電話は橋本楓にかけているようだったが、橋本楓の携帯電話はずっと電源が切られていて、誰も通じなかった。
「心さん!」
大野秘書はドアをノックしてから、ベッドの方へ歩いていった。
「大野秘書!どうしてここに?楓は?彼も来たの?」
心は大野秘書の声を聞くと、すぐに顔を向け、大野秘書を見た瞬間、暗かった目が急に輝き、布団をめくってベッドから降りようとした。しかし、動いた途端、その手に突き刺すような痛みが走り、彼女は耐えられずに痛みの声を上げた!
それはあの日、星野夏子と揉み合って怪我をした手だった。脱臼し、筋や骨も傷つけていて、この数日間ずっと苦しんでいた。
「心さん、気をつけて!」
大野秘書は近づいて、彼女を支えた。
「楓は?彼も来たの?大野秘書、あなたは彼がどこにいるか知っているでしょう?彼の携帯は電源が切れていて、私はどこを探しても彼を見つけられないの。説明しなきゃいけないの!彼を失うわけにはいかないの。大野秘書、早く教えて、早く教えて……」
心は痛みも構わず、大野秘書の服をつかみ、焦りと不安で急いで尋ねた。
「心さん、まず落ち着いて、横になってください。橋本社長の指示で来ました。彼は出張に行ってしまったので、特別に私を寄越して、あなたに渡すものがあると言っていました。」
大野秘書は心のこのような脆い姿を見て、少し忍びなく思ったが、彼女が本当にこういう性格なのかどうかはわからなかった。あの日、西園での状況も、彼は目の当たりにしていた。
「何のもの?いらないわ!楓を探しに行くわ!」
大野秘書の言葉が落ちると、心はすぐに固まり、何かを感じ取ったかのように、突然もがき始め、大野秘書を押しのけた。