第210章 月影株主総会(二)

楓の館に戻り、夕食を済ませた後、彼はいつものように直接二階に上がった。星野夏子は食器を片付けてから、階段を上がった……

半乾きの長い髪を下ろしたまま浴室から出ると、夜もだいぶ更けていた。寝室も外の居間も灯りが消えていたが、寝室から出ると書斎のドアの隙間から微かな光が漏れているのが見えた。少し考えてから、水を一杯注ぎ、書斎へ向かった。

しかし、書斎のドアに着いて中を覗くと、デスクの椅子に彼の姿はなかった。不思議に思っていると、空気中に漂う微かなタバコの匂いと、涼しい風が感じられた。

彼女は無意識に床から天井までの窓の方を見やると、高い本棚の下で、窓辺に寄りかかってタバコを吸っている男性の姿が見えた。

「タバコばかり吸わないで、体に悪いわよ」

彼女は近づいて、彼の指の間でまだ燃えている半分のタバコを取り、手に持っていた水を彼に渡した。

藤崎輝は目の前で眉をひそめて見上げている小柄な女性を見下ろし、彼女の指先に挟まれたタバコを見てから、軽く微笑んだ。「暇つぶしだよ……明日の書類を整理して、それから早めに休もう」

「何か心配事でもあるの?」

彼女は思わず尋ねながら、手のタバコを消した。

「何の心配があるというんだ」

彼は水を一口飲み、低い声で言った。「考えすぎだよ、ただ少し疲れているだけだ」

「年が明けたばかりで疲れたなんて言って、一年はまだ長いわよ」

星野夏子は軽く笑いながら、彼の袖に付いた灰を払った。「以前は上層部の人間は部下に命令するだけで、部下の気持ちなど考えないと思っていたけど、自分がその立場になってみて初めて分かったわ。実は上層部の方がもっと大きなプレッシャーを抱えているのかもしれないって。私が会社に入ったばかりの頃……」

「その頃の私はあなたの目には悪徳資本家に見えていたのかな?」

彼は口元に笑みを浮かべ、冗談めかして彼女を見た。

星野夏子は肩をすくめた。「私が会社に入ったばかりの頃、マーケティング部にいたことがあるの。私たちのマネージャーはとても堅苦しく厳格な人で、部下に厳しい要求をしていたわ。いつも私たちに自立することを強調して、市場に問題が発生するたびに、私たち自身で解決するよう求めて、自分は見ているだけ。だから部下は皆彼女に不満を持っていて……裏では冷酷なババアって呼んでいたわ……」