第166章 盛装出席(四)

阿部恒と一緒に立っていると、とても似合っているように見えた。

あっという間に、須藤菜々はすでに阿部恒の腕を掴む手を離し、星野夏子に向かって歩み寄ってきた。星野夏子がまだ黒い正装姿であるのを見て、すぐに眉をひそめ、「こんな時間なのに、まだそんな格好なの?」と言った。

星野夏子は思わず笑い、ようやく携帯を収めた。傍らの阿部恒は星野夏子に微笑みながら頷き、それから佐藤社長に挨拶するために歩いて行った。

「このままステージに上がるつもりじゃないでしょうね?今夜は花々が競い合うコンテストみたいなものだって誰もが知ってるわ。あなたがそんな格好だと、藤崎若旦那はどう思うかしら?派手な女性たちが藤崎若旦那に近づく機会を狙っているわよ。あとでダンスパーティーもあるって聞いたわ!」

須藤菜々は星野夏子を脇に引き寄せ、長いドレスの裾を手に持ち上げた。「私みたいな人間でさえこんな格好に着替えなきゃいけないのよ。それに、あの星野心と橋本楓も今夜来るんでしょう?彼らを踏みつけて私の恨みを晴らす機会じゃないの?」

星野夏子はこの時、少し恍惚としていた。しばらく黙った後、やっと手の中の携帯を無念そうに振り、淡々と答えた。「忙しくて忘れていたの。ちょうどあなたに電話して何か持ってきてもらおうと思っていたけど、時間が過ぎるのが早くて、もう3時半近いわ。あなたと阿部恒ももう来てしまったし。」

須藤菜々は言葉を失い、頭を掻きながら少しイライラした様子で言った。「あなたには本当に困るわ。全く自覚がないんだから。いいわいいわ、今すぐ一緒に見に行きましょう。ファッションモールはすぐ近くでしょう?まず見に行きましょう、行くわよ!」

そう言いながら、彼女は星野夏子の手を取った。

「もういいわ、必要ないから。私一人で行くから。パーティーはもうすぐ始まるし、あなたたちは先に入って。人が多いから、後で見つからなくなるといけないし。私はまだ舞台裏に行かなきゃならないから。梅田さん、阿部さんと須藤さんを中に案内して。」

星野夏子は須藤菜々が何か言うのを待たずに、手を振って傍らの助手の梅田さんを呼び、須藤菜々と阿部恒を中に案内させた。

「菜々、阿部恒、先に梅田さんと一緒に入って席を確保して。後で会いに行くから。」

「阿部さん、須藤さん、どうぞこちらへ。」

梅田さんは微笑みながら近づいてきた。