Check For the Proof

暗い...

私は何をしていたんだっけ

確か化け物に吹っ飛ばされて...それから...

「シ.........ロ......」

「シ.....ロ..!.....しっか...!.」

ああ、この声...

私が知ってる声だ...

「手を.....!し......つかま...!」

ガチャンという音で目が覚める

辺りの景色は洞窟でもなく、整備された人工的な場所だった。

どこだろうと疑問に思いながら体を起こそうとしたとき。

ガチャン

起きた時に聞いた音がした。視線を手に移すと片腕に手錠がかけられていた。

その手錠はベッドのフレームにかけられていて、動けないようになっていた。

「ふんぬ...!」

力を込めてその手錠を壊そうとしたが

ボキッ!

手錠は外れなかったが、ベッドのフレームが壊れた。

「あちゃ...まいっか...」

壊したベッドはここの人に直してもらおう

扉を開けると廊下に出た。人の気配は一向にない。

誘拐でもされたのだろうか。

散策がてら歩みを進めると角の向こうから女性が

「まずいまずいまずい!!このままだと会議に遅れちゃうぅぅぅ!!」

そう叫びながら走ってきて。見事にごっつんこした。

「イタタタ...」

そういいながら両者は立ち上がり

「ごめんなさい!!急いでてよく見てませー」

そう言いかけると女性はまるで変装をといた狐を見ているかのように驚いた顔で

静止した。困惑しながら少女が

「えっと...」

と聞く。その後ハッとして

「私の顔に何か付いてまー」

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

女性は顔を見るなり大声を張り上げ向こう側へ走ってしまった

(寝起きだから変な顔だったのかな...)

知らずに怖い顔でも作ってしまったのかもしれない。

彼女はほっぺたをぺしぺしと叩き、散策を再開した。

どうも誘拐されたわけではないらしい。

目新しい場所であることは間違いない。見たことのない照明や壁に囲まれて、

恐怖心半分好奇心半分で廊下を進み、おもむろに向こう側から声のする2枚扉があった

興味本位で開けると、向こう側にいた10人ほど全員の視線が開けられたドアに向けられた。

(まず...)

そう思っていると後ろからきたさっきの女性に

「捕まえました!ちょっとこっち来てください!!」

そう言って再び、今度は両手に手錠をかけられ、身体を引かれながら連れていかれた。

(この手錠なら余裕で壊せそうだけどな...)

そう思いながら手を下に降ろし、いつでも壊して反撃できる体制を取りながら

ついていくとひと際大きな扉があり、その中に入ると女性が

「連れてきました!」

と目の前にいる男性に言う

「ありがとう、会議に戻っていいよ僕から事情は説明しておくよ」

そう言うと女性は下がっていった。

「もうちょっとで迎えに行こうとしてたら外に出てしまってたんだね」

と男性が頭をポリポリしながら言った。

彼女はずっと前から持っていた疑問を投げかけた。

「あの...」

「ここどこですか?」

男性は口を開けて答える

「ここは都市エスメレテさ」

「僕はその管理者のエルメスこれからよろしくね」

エルメスはそういったが、少女には引っかかる部分があった

「これから?どうしてこれからなの?」

「君はこれから僕達の奇獣対策組織に入るからだよ」

「それにそんな恰好で出すにしても町中に出すわけにはいかないから」

(そんなに変な恰好...)

彼女は今の布切れのような服と怪物のような左手を見て

(まあそうか...)

と納得したが、エルメスは手鏡を取り出しながら、

「それに君の顔自分では気づいてないかもだけど...」

「とても普通の人の顔に見えないよ」

そう言われ、渡された手鏡に視線を移す

「...」

言葉は出なかった。いや、叫び声が出かかっていたが出なかった。

彼女の顔の左半分何かに侵食されたように黒く染まり、結膜は黒く、目の色は

青緑に瞳孔が縦になっていてまるで蛇のような形になっていた。

「君は何者なんだい?私的には君は奇獣と映っているけど...?」

人間...人間ではないなにかは出てこなかった叫び声を殺し、代わりに言葉を発した

「私は...」

「信じて...ください...私は人間なんです...」

自分でも疑問だった。本当に人間なのかどうか

だがこの場はただ自分が人間だと信じるしかなかった。

「もし人間なら、君には名前があるはずだろう?」

「君はなんて言うんだい?私も"君"っていうのが疲れたんだ。名前で呼ぶのが好きだからね」

名前...

彼女には記憶がなかった。名前の記憶も、これまでの人生の記憶も。

ふとさっき見た夢を思い出す。

シロ

途切れ途切れだったが夢の声の主はそう言った。それが本当の名前なのかはわからない。

だが無いよりはマシだろう

「私の名前は...シロ」

「シロか...やっぱり聞かない名前だけどちゃんと名前はあるみたいだね」

シロはとりあえず何とかなったことにホっと胸をなでおろした。

「それじゃあシロ君、保身ということもあるが君の体を調べたいんだ。」

エルメスはそう言った。

「...献血も?」

「勿論」

「献血だけ回避っていうのは...」

「ないね」

シロはため息をつき、仕方ないかと自分を納得させ受けることにした。

検査は単純なもので終わった。がやはり献血だけは苦手なようだった。

「こちらが検査結果です。」

エルメスは検査官からもらった検査結果に非常に興味を持ったような趣で、

「なるほどね...君は半分は人間半分は奇獣といった所か...」

「しかも奇獣の中でも天級いやそれ以上かもしれないね実に面白い...」

とエルメスがぶつぶつと言っていた。

「あの...」

とシロが疑問に思い聞く

「奇獣ってなんです?それに天級って...?」

エルメスは

「奇獣を知らないのかい?本当に何も覚えてないんだね...」

と眉をひそめながら言う

「いや、獣(ビースト)ということは覚えています。ですが...奇獣(キメラ)と呼んだ覚えがないから...」

「なるほどね...」

エルメスが説明を始めた

「奇獣っていうのは、30年前に突然地中から飛び出して、

 この地を大都市から更地にした化け物たちのことさ」

「それで、ここはもともと近くの洞穴の地中探索拠点だった場所を都市にした場所なんだよ」

「そして奇獣には 地級 獄級 そして天級の3つがあってその中で更に

下位 中位 上位に分かれてるんだ。特異な個体はその中からナンバーが振られるけど」

「シロ君の中、正確にはシロ君自身かな?の奇獣は天級下位もしくはそれを上回る

ポテンシャルがあると思うんだ。」

「実際に見てないから分からないけど君が変化して戦ったあの雷の奇獣は天位上位

に位置する奇獣なんだ」

エルメスがひと通りの説明を終えるとシロは

「つまり私は、変化すればつよいってこと...?」

と訝しげに聞いた。

エルメスは難しそうな顔をし、あごに手を当てながら

「確かに君は変化すれば強い。

だが君自身の体にどんな影響があるか分からない。」

「こういう変化する生き物だったり奇獣は何かしら代償があるんだ。だから君の

変化も完全に代償がないとは言い切れない。」

と答えた。

「なるほど...」

と納得していると、後ろの扉が開き、

「エルメスさん!お陰様で元気になりました...あ!貴女あの時の!大丈夫だった!?」

 と雷に打たれていた女の人が心配そうに話しかけてきた。

「紹介するよ。彼女はレナでそっちの彼がオリバー。二人とも優秀な探索員なんだ」

「二人共この人はシロって言うんだけどどうやら記憶がないみたいなんだ」

とお互いの紹介をエルメスがする。

「シロ...髪の色と一緒の名前なのね!よろしくね!シロ!」

そう言ってレナは手を差し出した。シロはその手を取り握手をした。

「うん...よろしくね」

そう言って次にオリバーの方を見て手を差し出す

「オリバー...だっけ?よろしく-」

「俺はこいつを信じないからな、奇獣から出てきたのを見てるからな」

オリバーはそう言うと差し出しされた手を乱暴に振り払った

「ちょっと!オリバー!ごめんねシロ...」

「大丈夫だよ、気にしてないし」

(ちょっと痛かったな...)

シロは払いのけられたてを少しだけさすりながら

「あの...部屋に戻っていいですか?あとベッド壊しちゃったので修復をお願いしても...?」

そういうとレナが

「じゃあ私の部屋行きましょうよ!色々話したいですし!」

そういい目をキラキラさせ手を握り激しくぶんぶん振り回したが、

「悪いけどレナくんとオリバーくんに少しだけ話があるんだ。シロくん外で待っててくれないかい?」

そう言ってエルメスは二人を検査官の近くに呼んだ。

「分かった」

「じゃあ後でね!シロ!」

そういうと扉を閉めて歩き始めたが、すぐに

「あっ...」

と足を止める。

(どっちいけばいいか聞くの忘れた)

エルメス レナ オリバー そして検査官の

「フェイン君...これは...」

そうエルメスが言うとフェインと呼ばれた検査官はシロの体を透過させた写真を差し出した。

「はい、心臓の真下に奇獣のコアが映っています。

恐らく彼女は旧式の奇獣武装を身に付けています。ですがそれだけではなく...

感応値が87%です...この高さは人の域を離れております。」

オリバーとレナはその話を聞き

「感応値が高いんですか...?それだと力をうまく発揮できないのでは?」

とレナが聞く。

「そういう訳ではないんだ。というのも旧式の対奇獣武装は仕組みが違っていてね」

とエルメスが答える。それに続けて

「今の対奇獣武装は手元の装具にコアを埋め込みそれを使用者が構築触で変形させて使うもので...

 旧式は施術でコアを体内に埋め込んで武器を無から構築触で作って使うっていうものなんだよ」

と説明した。

それを聞いたオリバーが

「つまり感応値が高いと体の中のコアが共鳴しまくるってことか?」

と言う。エルメスは頷きながら

「そういう事!でも共鳴すればするほど強くなるのが旧式なんだ。それに旧式は

今みたいに誰でも奇獣武装を身に付けれるっていうものではなかったんだ。

コアを身体に埋め込む関係上体が耐えられないといけない。もし耐えられないと

埋め込んだコアに吞み込まれて死んでしまうんだ。」

そう続けるエルメスに

「仕組みは我々武装使いと変わりはない。ただなり方が違うだけです。」

フェインが補足する。

「なるほど...」

とレナとオリバーが頷く。

「そこで君たち二人にお願いしたいことがあるんだ。」

「彼女が奇獣になった件も含めて彼女を監視しておいてほしい。

それにこのことがドクにバレたらまずい。だからその時の護衛も

お願いしたいんだ」

とエルメスがお願いをする。

オリバーはバツが悪そうに

「あいつ奇獣なんだろ?だったらさっさとドクにつきつければいいじゃねぇか

解剖すればそれなりに情報が得られるだろ」

と言うが、反論するように

「確かにドクは解剖の天才で、これまで様々な奇獣を解剖し、色々な装具を発明してきたけど

彼女はまだ完全に奇獣になっているわけじゃない。半分は奇獣で半分は人間つまり人間ともとらえることができるんだ。」

エルメスがそう言う。

レナが難しい顔をしながらまとめるように、

「要は護衛兼監視役をしてくださいってことですよね...?分かりました!私そのお仕事引き受けます!」

と覚悟を決め、まっすぐにそう答える。それにオリバーが

「レナ。いいのか?後には引けねぇぞ?」

と忠告をするが、それを払うかのように

「オリバーがどう思うかは勝手。私はシロの記憶を取り戻す手伝いをしたいから!」

と駆け出して扉を出て行った。

オリバーもそれについていくようにゆっくりと出て行った。

「エルメス、最後に二つ」

「なんだねフェイン君」

「彼女のコア、形質を調べてみましたが該当する奇獣が見当たりませんでした。

恐らく彼女のコアは不明もしくはオリジナルのコアかと...」

「該当がない...?新種でもない限りそんなこと起きないし...

ましてや彼女は旧武装だよ...?」

「それと不可解な点がもう一つ。彼女の血中から微量の瘴気、ブラックイリスが検出されました」

「まさか彼女が...?」

「可能性は低いですが、念のため」

「...分かった。ご苦労様だったね」