声の変化を感じ、彼女はハッとして、自分の体が驚くほど熱くなっていることに気づいた。薄いシャツはすでに汗でびっしょりと濡れていた。
体内では激しい欲望が渦巻いていて、まるで止められない洪水のように彼女を完全に飲み込んでいた。
安藤若菜は心の中で慌てふためき、恐怖を感じていた。目には霞がかかったように水気を帯び、華奢な体はふるいにかけられたように震えていた。
男が突然手を放すと、彼女の骨なしのように柔らかい体はカーペットの上に滑り落ち、起き上がる力さえなかった。
藤堂辰也は彼女の顎をつかみ、顔を上げさせた。漆黒で深い瞳の光は、まるで彼女を一口で飲み込みたいかのようだった。
彼の指先のわずかな冷たさに、安藤若菜は軽く震えた。
「安藤若菜、自制心がなかなかいいじゃないか」男は薄く笑い、刀で彫ったような端正な顔に悪魔の本性を現した。すぐに笑みを消し、鋭く冷たい目つきで言った。「どこまで耐えられるか、見てやろう!」
安藤若菜は激しく彼の手を振り払い、テーブルの上のボトルを掴むと、力いっぱいテーブルに叩きつけた。ボトルは粉々に砕け散った。
彼女はガラスの破片を一つ掴むと、素早く隅に身を縮め、藤堂辰也から遠ざかった。
鋭い破片を自分の喉元に突きつけ、欲望に狂いそうになりながらも、彼女の目には依然として頑固さが残っていた。
「近づかないで...さもないと...死んでみせるわ...」
藤堂辰也は恐ろしい目つきで彼女を見つめた。
彼は安藤若菜が外見は柔和でありながら、こんなにも気性が激しいとは思っていなかった。
二人は数秒間にらみ合い、男はリラックスした姿勢をとり、長い脚を組んで、薄い唇に冷笑を浮かべた。
「近づかないよ。お前が来るのを待っているだけだ」
「そんなことない...絶対に...」安藤若菜は体を強く抱きしめながら言ったが、自分でも自信のない言葉だと感じていた。
しかし彼女は本当に死んでも彼に近づきたくなかった。
おそらく藤堂辰也は誰の目にも神のような存在の男だろう。しかし彼女にとって、彼は悪魔だった。彼女が嫌悪し、恐れる悪魔。
あの日ホテルで起きたことは、彼女の人生の悪夢だった。
記憶を失わない限り、彼を許すことは絶対にできなかった。