第52章 濡れてるのに、何を着るの

安藤若菜は彼の言葉を聞いて、心が深淵に沈んだような気がして、全身が寒さで震えた。

なるほど、彼が先にこの件を追及しなかったのは、これを使って彼女を脅すつもりだったのか……

「あなたって本当に陰険で卑劣ね!」

「毒がなければ男じゃない」男は自然に、得意げに答えた。

安藤若菜は視線をそらし、彼を見ることさえ嫌だった。

「藤堂辰也、あなたは私を脅しているのね。でも安藤家と衆城の提携は、あなたが好き勝手に手を加えられるようなものじゃないわ。そんな話は何も知らない人を騙すならまだしも、私には通用しないわ」

藤堂辰也の指はすでに彼女の一番上のボタンを外していたが、安藤若菜は抵抗しなかった。おそらく彼が何をしているかを気にする余裕すらなかったのだろう。

「安藤若菜、私が根拠のないことを言うと思うか?信じなくてもいい、明日にでも私にその力があるかどうか、わからせてやる……」