「胸が痛くて、肋骨が一本折れてるんだ。どうやって階段を上ってきたか、君には分からないだろう。今、下りろって言うなら、きっと僕の命を奪うことになるよ」
彼がわざと大げさに言っていることは分かっていたが、安藤若菜は、彼が本当につらい状態だということを知っていた。
彼の顔の汗を見るだけで、ここまでの道のりにどれだけ苦労したかが分かった。
「じゃあ、少し休んで。病院に連絡して、医者に来てもらうわ」若菜はソファの端に座り、手を伸ばして受話器を取ろうとした。
雲井陽介は突然彼女の腕をつかみ、強く引き寄せ、腕で彼女の体をしっかりと抱きしめた。若菜は一瞬固まり、もがこうとしたが、彼は急いで言った。「動かないで、胸が痛いんだ」
若菜は本当に動けなくなった。少し怒って言った。「陽介、手を離して、傷口に触れないように気をつけて!」