「辰也、私にとても優しいのね。」雲井雪は、藤堂辰也が本当に彼女のことを好きなのだと感じた。彼女は少し躊躇した後、試すように彼に言った。「辰也、私たち...婚約しない?」
藤堂辰也はゆっくりと顔を向けた。「何て言ったの?」
雲井雪は唇を噛み、言いにくそうに言った。「婚約しようって言ったの。まずは婚約だけで、結婚のことは後で考えてもいいから。」
女性から婚約を申し出られたら、男性なら即座に承諾するか、狂喜乱舞するはずだ。しかし藤堂辰也の表情はとても平静で、目にも波風一つ立てなかった。
「ねえ、僕についての噂を知ってる?」
雲井雪は少し驚いた。「どんな噂?」
「ある占い師が僕に言ったんだ。僕は運命的に六人の妻を不幸にする宿命があって、今までに五人を不幸にしてきた。あと一人で六人目になる。」男は冷静に話した。まるで他人事のように。