第162章 子孫を絶やす運命

安藤若菜は両手でシートをしっかりと掴み、痛みで全身が動かせず、ただ無力に前方を見つめ、次の瞬間に病院に着くことを願っていた。

しかし車は少し走っただけで、前に進めなくなった。

大雨が交通渋滞を引き起こし、前方は車で埋め尽くされ、一歩も動けなかった。

「くそっ！」藤堂辰也は低く唸り、車を方向転換しようとしたが、後ろにも多くの車が詰まっていて、バックすることもできなかった！

安藤若菜は絶望的な泣き声を上げた。「どうしよう……どうしよう？」

男は彼女を見る勇気がなかった。彼は携帯を取り出して番号をダイヤルし、数言葉を交わした。そして上着を脱いで安藤若菜の頭にかぶせ、ドアを開けて車を降り、彼女の側のドアを開けて、彼女を背負って走り出した。

暗闇の中、土砂降りの雨はまるで雨幕のように、人々の視界を遮っていた。

大粒の雨が顔や体に叩きつけ、ヒリヒリと痛かった。

安藤若菜は藤堂辰也の背中で揺れながら、力なく彼の首に腕を回し、雨に濡れた彼の横顔をぼんやりと見つめ、心の中で憎しみと痛みを感じていた。

彼が彼らの子供を死なせたのだ、彼女は彼を憎んでいた。

たとえ今、彼が雨の夜に彼女を背負って走っていても、彼女の許しを得ることはできないだろう。

おそらく彼は彼女が彼を憎んでいるかどうかなど気にもしていないのだろう。しかし、自分の子供を死なせてしまった今、彼の心情はどのようなものだろうか。

藤堂辰也がこのことで罪悪感を持ち、後悔するだろうと思うと、安藤若菜の心には突然、復讐の快感が湧き上がった。

藤堂辰也、これはあなたの自業自得よ、あなたに一生罪悪感と後悔を味わわせてやる！

男は彼女を背負って数キロ近く走り、病院に着いた時には、すでに息も絶え絶えで、汗だくになっていた。彼の電話を受けた医師はすでに入り口で担架を準備していた。

安藤若菜は担架に乗せられ、すぐに救急処置室へ運ばれた。

藤堂辰也は一路ついて走り、救急処置室の入り口までたどり着くと、力尽きたように壁に寄りかかり、目を閉じて深く息を吸った。

彼の服は全身びしょ濡れで、まるで水から引き上げられたばかりのようだった。

彼が立っていた場所、つるつるに磨かれた床には、すぐに水たまりができ、服から水が滴り落ち、静かな廊下で時計の針のように、ポタポタと音を立てていた。