第178章 花嫁になるのを待っていなさい

藤堂辰也は申し訳なさそうに言った。「ごめん、どう説明したらいいのか分からなくて...」

もしかして彼は安藤若菜と一緒になることを決め、自分との結婚をやめるつもりなのだろうか?

雲井雪は思わず携帯を握りしめ、緊張と恐れの表情を浮かべた。「大丈夫よ、説明して。私は理解できるから」

電話の向こうの彼は少し黙った後に言った。「ただ...君が断る答えを聞くのが怖くて、電話をかける勇気が出なかったんだ」

雲井雪は一瞬呆然とし、その後巨大な喜びが頭を駆け巡った。

彼がこんな考えを持つのは、彼女のことをとても好きで、大切に思っているからに違いない!

だから、彼は安藤若菜を選ばない、彼はまだ自分のものだ!

「辰也、もう、驚かせないでよ!」雲井雪は泣きながら笑い、初めて彼の前で取り乱した。

藤堂辰也の魅惑的な声が響いた。「じゃあ、僕を拒むのか、それとも受け入れるのか?」

「もちろん受け入れるわ!」彼女はもう気取らなかった。どうせ彼は彼女をそれほど愛しているのだから、彼女も彼をとても愛さなければ。

「辰也、結婚するって約束するわ。婚約しましょう!」

「でも、僕は婚約せずに直接結婚したいんだ」

雲井雪は驚いて言った。「そんなに急いで?」

「ああ、ただ早く君を家に迎えたいんだ」藤堂辰也はバルコニーに出て、手すりに手をついて、遠くの方向を見つめた。彼の目には少し複雑な感情が浮かんでいた。

雲井雪は少し黙った後、彼に尋ねた。「じゃあ、いつ結婚式を挙げるつもり?」

「二週間後はどうだ?」

「すごく早いわね」

藤堂辰也はもう答えなかった。夜風が彼のスタイリッシュな短髪を撫で、彼は目を細め、この瞬間の心地よさを楽しんでいた。

雲井雪は彼が怒ったのだと思い、安藤若菜が時限爆弾のようなものだと考え、歯を食いしばって頷いた。「わかったわ、すべてあなたの言う通りにするわ」

「ベイビー、花嫁になる準備をしていてね」藤堂辰也は微笑んだ。

電話の向こうの雲井雪は甘い笑顔を浮かべた。彼女はついに彼の花嫁になれるのだ。

翌日、新聞にはすぐにニュースが掲載された。

藤堂氏の社長、藤堂辰也が二週間後に結婚式を挙げることを決定した。

記事はとても簡潔で、新聞社の人々も内幕を掘り出せず、この一文だけを得た。

しかし、この一文だけでもJ市に大きな波紋を広げた。