しかし藤堂辰也は彼女と離婚しようとしない。明らかに彼女のことを少しは気にかけているのだ。
おそらく彼女を気にかけているのではなく、男というのは皆プライドがあるもので、彼は安藤若菜が自分に対して感情を持っていないのを見て、征服欲を抱いたのだろう。
どちらにせよ、彼女は確信している。藤堂辰也は彼女を愛していないし、彼女も彼を愛していない。
安藤心は呆れた表情を浮かべ、彼女を諭した。「どうしてそんなに馬鹿なの!彼と結婚して藤堂家のお嫁さんの座に就いたら、誰にも取って代わられないと思ってるの?もし彼が他の女性と一緒になって子供ができたら、あなたのその座も守れなくなるわよ!」
ここまで言って、安藤心は一旦言葉を切り、はっとして言った。「そういえば、あなたたち結婚してずいぶん経つのに、どうしてずっと妊娠しないの?彼が...妊娠させたくないのかしら?」