第306章 私はあなたを気にかけ始めた4

彼はあの藤堂辰也なのだ、彼女が嫌っている男、彼女を苦しめる悪魔。

どうして彼が王子のように高貴だという錯覚を抱いてしまったのだろう。

安藤若菜は冷たく彼を見つめた。藤堂辰也は彼女が目を開けたのに気づくと、一瞬驚いた後、笑みを浮かべて尋ね返した。「やっと目を覚ましてくれたか?」

彼女は彼の言葉に答えず、周りを見回した。自分が病院のベッドに横たわっていることに気づいた。

安藤心が彼女を陥れたあの場面を思い出し、瞳孔が縮み、目には抑えきれない痛みと憎しみが浮かんだ。

「私は死ななかったのね?」彼女は淡々と尋ねた。

藤堂辰也は彼女の手をしっかりと握り、目尻や眉に笑みを浮かべた。「ああ、お前は死んでいない。俺が閻魔の手からお前を奪い返したんだ。だからこれからは、俺の許可なしにお前は死ねないよ。」