第318章 最後の窮鼠の戦い7

そう思うと、安藤若菜は彼の両親のことについて一度も聞いたことがないことに気づいた。

J市の人々は彼の名前と彼の成功だけを知っていたが、誰も彼の両親について言及したことがなかった。

彼の両親は、J市にいないのか、それとも、もうこの世にいないのだろうか？

そんなことを考えていると、男性が横を向いて彼女の目を見つめ、悪戯っぽく口角を上げた。「俺がかっこいいと思った？」

安藤若菜は視線をそらし、少し頬を赤らめた。

「退屈？」彼女の返事を待たずに、彼はまた尋ねた。

確かに退屈だった。毎日ベッドに横になっているだけで、テレビを見るか、床に降りて歩くこともできない。こんな生活が数ヶ月も続くのだから、退屈でないわけがない。

藤堂辰也は立ち上がって窓際に歩み寄り、下を見て笑った。「彼らは本当に言うことを聞くな。もう朝からずっと立っている。ただ、昼の強い日差しに耐えられるかどうかわからないけどね」