第320章 少し夫婦らしくなってきた1

刑務所に入れば、彼女の人生は台無しになるだろう。

これからどうやって人前に顔を出せばいいのか、どうやってJ市で生きていけばいいのか?

彼女の評判、彼女の将来、幸せな未来、すべてが失われてしまう。

安藤明彦は娘の性格をよく理解していた。彼は前に進み、沈んだ声で言った。「娘よ、お父さんはお前が見栄っ張りだということを知っている。安心しなさい、出所したら、新しい身分を用意してあげる。他の国で生活できるようにしてあげよう。そこではお前の過去を知る人はいない。お父さんはお前が刑務所に行きたくないことを知っている。でも、もしお前が刑務所に行かなければ、藤堂辰也は絶対に私たちを許さないだろう。安藤家さえあれば、すべてに希望がある。」

恐れているのは、藤堂辰也が安藤家に手を出すことだ。もし安藤家がなくなれば、それこそ本当に終わりだ。

「お父さん、私は本当に行きたくない……うっ……」安藤心は母親をしっかりと抱きしめ、とても悲しそうに泣いた。

「明日が最後の期限だ。もう一度彼らに頼んでみよう、希望があるかどうか。」安藤明彦は顔をそむけ、急に老けたように見えた。

彼の心の中では、安藤家が最も重要だった。しかし、安藤心は彼の唯一の子供であり、彼女も彼にとってとても大切だった。

しかし現在、安藤家のために、彼は心を鬼にして彼女を刑務所に送るしかなかった。

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安藤若菜は一晩中ほとんど眠れなかった。

安藤心のことを心配していたわけではなく、ただこれほど多くのことが起きたと思うと、眠気がなかった。

あの日、藤堂辰也が彼女にこっそり言ったことは、安藤心の子供が彼のものではないということだった。

今や彼はその時の動画をネット上にリークし、これは安藤心にとって絶対に致命的な打撃だ。

本当に、こうなるとわかっていたら、最初からしなければよかったのに。

安藤心が今日この一歩を踏み出した以上、結果は彼女一人で負うしかない。

空が徐々に白み始めた。

病室は静かで、安藤若菜は早くに目を覚まし、ずっと目を開けていた。

彼女は少し喉が渇いて、水を飲みたかったが、水の入ったコップに手が届かなかった。

島村おばさんは外の部屋で寝ていて、彼女が一声かければすぐに起きてくるだろう。