第333章 あなたを藤堂辰也に嫁がせるべきではなかった5

藤堂辰也は冷笑した。「証拠はあなたの目の前にあるじゃないか？」

安藤明彦の視線は書類袋に落ちた。彼は恐怖で震えていた。

彼は開けて見る勇気がなかった。中に本当に証拠があるのではないかと恐れていた。

前回、藤堂辰也は彼が兄の株式を奪った証拠、殺人の証拠を出してきた。今回も同じように証拠を持っているのではないか？

安藤若菜は突然車椅子を押し、素早くデスクに近づいた。

彼女は書類袋を掴み、急いで開けた。中には事故現場の写真と、当時の警察の結論報告書があった。

しかし最も重要なのは、ある供述書だった。

安藤若菜は途切れ途切れに読み上げた。「私、孔田承輝はここに懺悔します。私の懺悔の決意を示すため、私は過去に犯した罪を書き記すことにしました……

約12年前、安藤明人と安藤明彦は安藤家の自動車部品製造企業を設立しました。

私たち三人は自動車設計を学んでいましたが、私の技術が最も優れており、安藤明人は最も商才がありました。そのため、彼らが会社を設立した後、私も加わり、安藤家の重要な技術メンバーとなりました。

わずか1年で、安藤家は急速に成長し、利益もどんどん増えていきました……

しかし安藤家が儲け始めたとき、安藤明人はビジネス界の駆け引きに嫌気がさし、会社を売却してビジネス界から手を引くつもりでした。

安藤明彦は売却に同意せず、兄弟は何度も言い争いました。

ある日、安藤明彦は私を訪ね、取引を持ちかけてきました。

彼は私に安藤明人の車に細工をするよう頼み、成功したら安藤家の株式の20％をくれると言いました。そうすれば彼は安藤家全体を所有できるのです……」

ここまで読んで、安藤若菜は全身を震わせ、もう読み続けることができなかった。

彼女は残りの部分を読み終えると、涙が雨のように流れ落ちた。両親はこうして亡くなったのか……

藤堂辰也は彼女の側に歩み寄り、優しく彼女の手から供述書を取り、その場にいる人々に簡潔に説明した。

「孔田承輝は安藤明彦との協力に同意し、車に細工をしました。それも完璧に行い、誰もその問題に気づくことはありませんでした。

しかし人を殺した後、彼は日々悪夢に苦しめられ、心が落ち着かなくなりました。そのため安藤明彦から提供された株式を受け取らず、隠居して懺悔の生活を送ることを選びました。