孔田承輝は目を伏せ、冷たく言った。「安藤明彦、ここまで来て、まだ認めないのか?認めなくても構わない、警察が調査するだろう。お前は逃げられない」
安藤明彦は突然立ち上がり、彼を指さして怒りに震えて叫んだ。「私には罪はない!人を殺したのはお前だ。お前の一方的な言い分以外に、私がお前に指示したという証拠があるのか!」
「いつかお前がすべてを私のせいにすると思っていた」孔田承輝は得意げに笑った。
「だから当時、私が去る時の会話を全部録音しておいた。テープは藤堂さんの手元にある。必要なら彼に再生してもらえばいい」
藤堂辰也はボディガードの一人に目配せし、ボディガードは用意していた古いテープレコーダーを取り出し、テープを入れた。
テープが回り始め、中から二人の男のざわざわとした会話が聞こえてきた。
「安藤副社長、私は株はもういらない。少しお金をくれれば、ここを離れて、二度と戻らないつもりだ」
「承輝、お前は臆病すぎる。お前の技術は信じているよ。安心しろ、警察がお前にたどり着くことはない」
「...私は良心の呵責に耐えられない。安藤社長と奥さんを死なせてしまった。毎晩悪夢を見る。だめだ、ここを離れなければ」
「わかった、お前に金を渡して去らせよう。だが約束してくれ、この件は死んでも漏らさないと」
「わかった、約束する!だがお前も約束してくれ。安藤社長の幼い子供たちを大切にすると。私たちは間違ったことをした。取り返しはつかないが、せめて彼らに償いたい」
「それは安心しろ。彼らは私の甥と姪だ。粗末にはしない。実は私も兄と兄嫁を殺したくはなかった。だが兄が安藤家を売ろうとしたからだ。これは私の心血だ。彼が去るのは構わないが、売るなど絶対に許せない!」
...
安藤若菜はこれらを聞いて衝撃を受けた。彼女の手は車椅子の肘掛けをしっかりと握り、どこからか力が湧いてきて、突然立ち上がり、テーブルの上の灰皿を掴んで、安藤明彦の額に力いっぱい叩きつけた。
そして彼女の体がくずれ落ちそうになったが、傍にいた男性が間一髪で彼女を受け止め、倒れるのを防いだ。
安藤明彦は不意を突かれて頭を割られ、裂けた傷口からすぐに大量の血が流れ出した。