毎回長い時間をかけて情熱が終わる頃には、安藤若菜はとても疲れていたが、心の中は甘い幸せで満たされていた。
彼は何も言わなかったが、彼女は知っていた。彼は彼女と離婚するつもりはなく、藍田佳人を選ぶこともないだろうと。
彼が藍田佳人を選ばないということは、彼の心の中に彼女がいるということなのだろうか?
安藤若菜は考えれば考えるほど嬉しくなり、夢の中でさえ笑っていた。
ただ彼が彼女を気にかけているというだけで、こんなにも嬉しいなんて、以前の彼女には想像もできなかったことだった。
もし以前、誰かが彼女に将来藤堂辰也を愛するようになり、彼のちょっとした気遣いで喜ぶようになると言ったら、彼女は絶対に信じなかっただろう。
でも今の彼女はそうなっていた。世の中のことは、本当に予測できないものだ。
ぐっすりと眠った後、安藤若菜が目を覚ましたときには、すでに翌日の昼だった。
ベッドには藤堂辰也の姿はなく、彼女一人だけだった。
彼女は起き上がって服を着て洗面を済ませ、寝室を出て書斎のドアを開けた。
書斎では、藤堂辰也が電話をしていた。彼女がドアを開けるのを見て、彼は電話の相手に淡々と言った。「今、用事ができた。切るよ」
携帯を閉じると、彼は安藤若菜を見た。「何か用?」
安藤若菜は笑って首を振った。「さっき、邪魔しちゃった?」
男は立ち上がって彼女の前に来ると、彼女を抱きしめ、身をかがめてキスをした。「いいや。お腹すいただろう、下で食事にしよう」
「うん」安藤若菜は彼の腰に腕を回し、一緒に階段を下りた。
彼女の気分はとても良く、顔の笑顔も輝いていた。
藤堂辰也は彼女が何を喜んでいるのか分かっていた。彼女の機嫌が良いのを見て、彼の気分も良くなった。
食事の後、彼は書斎に戻って仕事を続け、安藤若菜は階下でテレビを見ていた。
携帯電話は机の上に置いたまま、藤堂辰也はしばらく仕事をした後、思わず携帯を見て、梁井萧に電話をかけるべきかどうか迷っていた。
先ほど藍田佳人から電話があり、電話の中で彼女の声にはやや弱々しさが感じられた。彼女は病気になったようだった。
彼は彼女に体調が悪いのかと尋ねると、彼女は少し風邪を引いただけだと言い、彼もそれ以上何も言わなかった。