第413章 彼女は自由の身

男は胸が締め付けられる思いがした。彼も二人の女性の間を行ったり来たりするのが、どちらにも不公平だということを知っていた。

しかし、一方は長年愛してきた女性、もう一方は子供の母親。彼はどちらを手放せるというのか?

結局のところ、この子供が来るタイミングが良くなかったのだ。

喉が動き、藤堂辰也は低い声で言った。「できるだけ早く彼女にこのことを話すよ。それに、君は浮気相手じゃない。君は自由な身分だから、自分をそんなに低く見ないでくれ」

彼の言うことは理にかなっていた。

彼はただ子供に会いに来ただけで、彼女に会いに来たわけではない。彼は彼女と何かをしたわけでもなく、確かに彼女は浮気相手ではなかった。

しかし、感情というものは、はっきりと説明できるものだろうか?

断ち切れない縁、かつて起こったすべてのことは、永遠にきれいに切り離すことはできない。彼が彼女の前に何度も現れるとき、彼らがお互いに何も思っていないと誰が保証できるだろうか。

安藤若菜は車の窓に寄りかかり、静かに目を閉じ、もう何も言わなかった。

——

家に帰ると、藤堂辰也は島村おばさんにたくさんのことを頼んでから、去っていった。

安藤若菜はソファに座り、突然大胆な考えが浮かんだ。

藤堂辰也が彼女は自由な身分だと言うなら、彼女は新しいパートナーを見つけ、他の男性と付き合うことができるのだろうか?

彼女は新しい生活、新しい感情を必要としていた。おそらく次の角を曲がれば、彼女の新しい人生が待っているかもしれない。

彼女は夏目望に電話してこのことを話した。夏目望は両手両足で彼女が彼氏を探すことに賛成し、興奮して言った。「私はたくさんの人を知っているから、全部紹介してあげるわ。明日にでも一人紹介して、会ってみない?」

安藤若菜はまた躊躇した。「それは子供が生まれてからにしようかな」

結局、妊婦が婚活するなんてことはないのだから。

大きなお腹で婚活に行けば、相手はどう思うだろう。すぐに病気だと思われてしまう。

「大丈夫よ、お見合いとは言わないから、ただの友達紹介ということにしましょう。先に良い人を見つけておいて、気に入ったら、ゆっくり関係を築いていけばいいじゃない」夏目望は大らかに言い、何の問題もないと思っているようだった。