第423章 若様はまだ来ていないの

藤堂辰也は表情を硬くした。彼女と結婚するのか？

この考えは、おそらく以前は彼も確固たるものだった。

しかし今日、彼は自分の心の中にも安藤若菜がいることを理解した。だから彼はもう確信を持てなくなった。

彼女と結婚したら、安藤若菜はどうなるのか？

彼は安藤若菜と他人になりたくない、彼女が自分のものでなくなることを望まない。

彼の返事が聞こえないので、藍田佳人は顔を上げた。顔には隠しきれない失望の色が浮かんでいた。

彼女は慎重に尋ねた。「辰也、あなた...嫌なの？」

藤堂辰也は口元を緩め、彼女の額にキスをして優しく言った。「君が今のような状態では、結婚したくないよ。まずは体を治してからにしよう。急ぐことじゃないし。」

藍田佳人はほっとした。彼が嫌がっているのかと思ったのだ。

「わかった、早く体を治すわ。」

その夜、藤堂辰也は眠れなかった。安藤若菜もとても遅くまで眠れなかった。

翌日の昼、彼女はようやくのんびりと目を覚ました。

島村おばさんが昼食を作ってくれて、彼女は少し食べた後、電話が鳴った。

藤堂辰也からの電話だった。安藤若菜の心は少し落ち着かなかったが、彼女は少し躊躇した後、電話に出た。

「食事はしたか？」男性は彼女を気遣って尋ねた。

「うん。」彼女は淡々と答え、何気なく聞いた。「何かあったの？」

「子供に会いに行きたいんだが、許可してくれるか？」

昨日彼女は彼に、今後子供に会うには必ず彼女の許可を得なければならないと言った。彼が彼女の言うことを聞くとは思っていなかったが、まさか本当に彼女に尋ねてくるとは。

「だめ。」安藤若菜は考えもせずに拒否した。

「なぜだ？」電話の向こうの男性は眉をしかめた。

「昨日もう会ったでしょ。毎日来る必要はないわ。用がなければ切るわね。」彼に話す機会を与えず、彼女は電話を切った。

しばらくして、藤堂辰也からまた電話がかかってきた。

安藤若菜は煩わしくて出たくなかったが、電話は鳴り続けた。彼女はいっそテレビをつけて音量を上げ、電話の着信音を隠した。

電話は鳴り止んだが、代わりにメッセージが届いた。

安藤若菜がメッセージを開くと、こう書かれていた：会いたい、許可してくれないか？

心はますます落ち着かなくなった。彼は一体何が言いたいのだろう？