彼女は陶山おじさんに、休みたいと言い、藤堂辰也の部屋で休むと指定した。陶山おじさんはすぐに笑顔で彼女を寝室へ案内した。
藤堂辰也の寝室は以前と同じ部屋だった。
安藤若菜が入ると、中に藍田佳人の物があるだろうと思っていたが、中には辰也の物以外に、女性が住んでいた形跡は全くなかった。
彼は藍田佳人と結婚したのではなかったのか、彼女はここに住んでいないのだろうか?
そうか、彼らはA国で婚姻届を出したのだから、きっとそこに家を構えているのだろう。
一年の時間が経ち、安藤若菜もいくつかのことを理解するようになった。
当時彼女を訪ねてきた見知らぬ男は、おそらく藤堂辰也が送ったのではなく、藍田佳人だったのかもしれない。彼女は意図的に、辰也と結婚したことを若菜に知らせ、自ら去らせようとしたのだろう。