第516章 味わってみる?

「あなたがまだ知らないかもしれないニュースがあります。藤堂玉伸が突然刑期満了となり、早期釈放されました。」

藤堂辰也は固まった。彼は目を細め、不確かに尋ねた。「何だって?」

「藤堂玉伸が出所したんだ。昨日釈放されたよ。私も今日になってようやくその情報を得たんだ。」

もともと終身刑を宣告された人間が、突然釈放されるなんてあり得ない。

しかし彼は知っていた。梁井萧が彼を騙すはずがない。あの男は本当に出てきたのだ。

「一体どういうことだ?」藤堂辰也は冷たく尋ねた。

梁井萧は淡々と言った。「彼は模範囚だったらしく、罪を償いながら警察の犯罪組織摘発に協力したとも聞いている。それに彼が当時犯した罪の多くが、この10年の間に冤罪と認められたから、早期釈放されることになったんだろう。」

言うまでもなく、外で誰かが密かに彼を助けていたに違いない。そして、それらの人々は間違いなく当時発覚しなかった彼の腹心たちだろう。

彼の腹心以外に、彼を助ける者はいない。

なぜなら、彼を助けることは、藤堂辰也と敵対することになるからだ。

「わかった。」男の瞳は深く沈み、声には冷気を帯びていた。「彼が釈放されたところで、何の波風も立てられないだろう。」

今の彼は、もはや昔の藤堂辰也ではない。

藤堂玉伸が出てきたところで、結局は自分の敗北者に過ぎない。

「でも油断はしないほうがいい。あいつは手ごわい相手だからな。」

「わかっている。」

電話を切ると、藤堂辰也は革張りの回転椅子に寄りかかり、漆黒の瞳に冷たい光が宿った。あるいは、そこには殺意さえ垣間見えた。

彼は目を動かし、部下の番号をダイヤルして、藤堂玉伸の行方を調査するよう命じた。

「海皇」はメディアンとほぼ同格の娯楽施設だった。

ただし、海皇で消費する人々のほとんどは、闇社会の人間だった。

薄暗くて騒がしい個室の中は、酒と色欲で退廃的な雰囲気に包まれていた。

個室のドアが開かれると、それまでざわめいていた場は一瞬にして水を打ったように静まり返った。

藤堂辰也は片手に開けたワインボトル、もう片方の手にグラスを持ち、くつろいだ様子で中に入ってきた。

中にいた一団はすぐに警戒して彼を見つめ、彼が少しでも動けば飛びかかって命を賭けて戦う構えだった。