第514章 見殺しを見過ごすことができない

「最後のチャンスもダメなのか？」藤堂辰也は痛ましく尋ねた、かつてない哀願の口調で。

彼女は首を振った。「一度もダメよ、私たちの子供がまだ生きていて、雲井陽介が目を覚ましていない限り」

藤堂辰也の顔色がさっと青ざめた。

雲井陽介はおそらく目を覚ますかもしれないが、彼らの子供は、決して蘇ることはない。

彼女は彼に、二人の間にもう可能性はないと告げているのだ。

安藤若菜が歩き出そうとすると、背後から突然、ぽちゃんと水に落ちる音がした。

彼女は足を止めかけたが、そのまま前に進んだ。しかし数歩進んでも、背後から音がしなかった。静まり返り、水音すら聞こえない。

一体何をしているんだ？

安藤若菜はじっと我慢したが、やはり振り返り、見たのは波一つない水面だった。

彼は酔っていたはず、もしかして気を失ったのだろうか？