今、福祉施設ができることは、彼を育て上げることだけだ。
安藤若菜は康太が両親に捨てられたと聞いて、とても怒った。さらに彼が自閉症だと聞いて、悲しくなった。
なるほど、この子には本当に問題があったのだ。
たとえ彼に問題があったとしても、両親は彼を捨てるべきではなかった。
自分が亡くした子供のことを思い出し、若菜は康太の両親が本当に嫌いになった。
彼らは知らないのだろうか、子供は神様からの最高の贈り物だということを。
院長は康太を抱きながら、彼らに微笑んで言った。「彼をここに連れてきてくれてありがとう。康太は本来、見知らぬ人を好まないんです。でも彼はあなたたちを拒絶しなかった。それは彼があなたたちを気に入っている証拠です」
若菜は康太が安藤心に対面したときのことを思い出した。心が彼に食べ物をあげても食べなかったが、自分が食べさせると食べた。
おそらく彼は誰が良い人で誰が悪い人かを本当に知っているのだろう。
この子の病状は、思ったほど深刻ではないのかもしれない。
「院長、康太には回復の可能性があると思います。彼はまだ幼いので、今から治療を始めれば、大きくなるころには必ず回復するでしょう。治療を続けるべきです。早々に希望を捨てるべきではありません」若菜は思わず言った。
院長の顔に困った表情が浮かんだ。そのとき、森田華が突然彼女の袖を引っ張り、急かすように言った。
「もう康太は大丈夫だから、そろそろ行こう。忘れないで、まだ精神疾患のあるいとこが見つかっていないんだ」
若菜は不思議そうに彼に引っ張られて外に出た。彼女は疑問に思って尋ねた。「なぜ私を外に連れ出したの?何か言いたいことがあるの?」
「気づかなかったのか?院長が康太を治療したくないわけじゃない。お金がないんだ」森田は率直に彼女に言った。
「康太のような病気を持つ子供は一般的に治らないし、治せたとしても大金がかかる。福祉施設は銀行じゃない。彼らにできることは子供たちを育てることだけで、病気を治すなんて贅沢なんだ」
若菜は呆然とした。彼女はそのことをまったく考えていなかった。
「政府が…」
「政府がそんなにお金を出して一人の子供を治療すると思うのか?一人治しても、次はどうする?病気を持つ子供はたくさんいる。全員を治療するお金を出せるわけないだろう?」