第547章 感情がないほうがいい

安藤若菜は彼の横に座り、自ら尋ねた。「以前着ていたプーさんの衣装はどこで手に入れたの？」

男は彼女を見つめ、漆黒の瞳に一瞬の驚きが走った。「なぜそんなことを聞くんだ？」

「どこで買ったか教えてくれればいいの」

「何に使うのか教えてくれれば、すぐに誰かに持ってこさせよう」

安藤若菜が彼女の計画を話すと、藤堂辰也はまた憂鬱になった。なんだ、全部あの小僧のためか。

しかし安藤若菜があの子を大好きなのは明らかで、彼も自分の嫌悪感をバカみたいに表に出すつもりはなかった。

「すぐに誰かに持ってこさせるよ」

「ありがとう」

藤堂辰也は彼女に手招きし、彼女は困惑しながら彼の隣に座った。男は手を伸ばし、愛情を込めて彼女の鼻先をつついた。優しい声で言った。「覚えておいて、これからは私に遠慮しなくていいんだよ」

彼の優しさに彼女は少し動揺し、立ち上がって自然な様子で言った。「じゃあ、上の階に行くわ」

男は彼女の後ろ姿を見つめ、瞳は暗く沈んでいた。

安藤若菜、いつになったら君は私を許し、もう一度私を愛してくれるのだろうか？

————

翌朝、安藤若菜はとても早く目を覚ました。藤堂辰也はもう少し寝るように言ったが、彼女は頭を振って、もう眠りたくないと言った。

彼女の心は康太のことで一杯で、すぐにでも彼のそばに飛んでいって、一緒に遊びたかった。

これからは毎日康太の健康回復を手伝うことを考えると、とても期待し、嬉しくなった。まるでそれが偉大なプロジェクトであり、成功すれば大きな満足感が得られるかのようだった。

朝食を済ませると、藤堂辰也は彼女を病院まで送ると言い、彼女は断らなかった。

道中、男はあの子を見に行くべきかどうか悩んでいた。

ここ数日、彼は多くのことを考えていた。もし安藤若菜が康太を引き取り続けるなら、彼も康太を受け入れ、ずっと一緒に過ごさなければならない。

完全に自分の息子として扱えなくても、父親の役割を演じざるを得ない。

それに、康太に優しくすれば、安藤若菜も彼に優しくなるかもしれない。

藤堂辰也は悲しくなった。いつから彼は二歳の子供の機嫌を取ることで安藤若菜の好意を得ようとするようになったのだろう……

車が病院の入り口に着き、彼が一緒に上がると言おうとした瞬間、電話が鳴った。