第546章 彼がこれを好きだとは思わなかった

このように何度か教えても、彼は食べる前に少しつけることを知らず、安藤若菜はやや気落ちした。

まあいいか、これからゆっくり教えていけば、いつか覚えるだろう。

食事が終わると、彼の手を拭いてから、抱きかかえてショッピングモールへおもちゃを買いに行った。

彼女の目には、康太は普通の子供だったので、自分の好きなおもちゃを選ばせたいと思った。

ショッピングモールの子供用おもちゃコーナーには、様々なおもちゃがあり、多くの子供たちが親の手を引いて、これやあれやと興奮して選んでいた。

安藤若菜も康太が彼らのように、自分の手を引いて自分で選ぶことを願っていた。

「奥様、お子さんのためにおもちゃをお探しですか？」

彼女が店に入ると、店員が丁寧に尋ねてきた。店員が彼らを親子と思ったのも無理はない、二人の顔立ちには少し似ているところがあったからだ。

「はい、ここにはどんな面白いものがありますか？」安藤若菜は康太を下ろし、彼の手だけを握って、意図的に自分で選ばせようとした。

「こちらは全て新商品です。トランスフォーマー、ミニ四駆、ラジコン飛行機、ラジコン電車……」店員は家宝を数えるように彼女に紹介した。

安藤若菜はただうなずきながら、ゆっくりと選んでいった。

「すみません、サンプルはありますか？全部出していただけますか？子供に自分で選ばせたいんです。」

「もちろんです。」

サンプルが全て床に並べられると、安藤若菜はしゃがんで小さな子に言った。「康太、見て、たくさんおもちゃがあるよ。自分の好きなものを選んでみる？」

床のおもちゃを見つめ、康太はぼんやりと見ているだけで、何の動きもなかった。

店員はさらにいくつかの可愛いキャラクターのおもちゃを持ってきた。「奥様、お子さんはまだ小さいので、こういった複雑なおもちゃは好まないかもしれません。こちらの方が好きかもしれませんよ。」

そう言いながら、彼女はカラフルなぬいぐるみの山を康太の前に押し出した。

一匹のヒップホップモンキーのぬいぐるみが彼の注意を引いた。彼はしゃがんで猿の尻尾をつかみ、お尻をついて座り込むと、遊び始めた。

安藤若菜は彼が猿一匹だけを選んだのを見て、少し笑ってしまった。彼女は恥ずかしそうに店員に尋ねた。「他にぬいぐるみはありますか？」