第45章

「そうよ、おばあさんがさっき電話してきたの、わざわざあなたに催促するように言われたわ。今夜のパーティー……」

冷泉辰彦の剣のような眉がさらに高く上がり、端正な顔に嵐が近づいているような暗さが現れた。

千雪はそれを見聞きして、とても居心地が悪くなった。彼女は愛を囁き合っている男女が見ているかどうかも気にせず、軽く頭を下げ、素早くドアの方へ歩いていった。

「女、私が行けと言ったか？」背後から男の怒号が聞こえ、女性は恐れて黙り込んだ。千雪は仕方なく振り返り、親密な姿勢の男女に問いかけるように視線を向けた。

彼と彼女のイチャイチャを邪魔しないのは、間違っていないはずなのに。なぜ彼は怒りを彼女に向けるのだろう。しかし、考えてみれば、彼とこの女性は本当に似合っている。

彼は威厳があり、強引で陰のある雰囲気を持ち、彼女は優雅で、美しくファッショナブルで、まさに天が結び付けた一対だ。それに比べると、彼女のような口のきけない女は一本のオジギソウのようで、どうしても劣等感を感じてしまう。

彼女は静かに目の前の男女を見つめ、しばらく待っても男性からの言葉がなかったので、再び歩き出そうとした。

冷泉辰彦は千雪の冷静な表情を見つめ、すぐに息が詰まる思いがした。彼は西川若藍を引き寄せ、自分の膝の上に座らせ、わざと女性を甘い悲鳴を上げさせた。「あら、辰彦、意地悪ね、もう少しでドレスが乱れるところだったわ……」

「パーティーに参加する前に、少し親密になろうか」彼は邪悪な表情を浮かべ、周りを気にせず西川若藍の敏感な腰を軽く摘み、目はドアにいる小柄な女性から離さなかった。この女性はあまりにも冷静すぎて、彼をひどくイライラさせた。

「あっ！」西川若藍は色っぽく息を漏らし、やっと勇気を出して玉のような腕を男性の首に巻き付け、甘い息を吐いた。

冷泉辰彦は彼女に応えず、鋭い目でドアにいる細い影を追い、西川若藍の甘い声に合わせてドアの女性の体が一瞬震えるのを見て、満足げに口元を歪めた。

しかし、それはほんの一瞬のことで、小柄な女性はすぐに冷静さを取り戻し、彼のオフィスを出て、ドアを閉めた。彼の唇は即座に一直線になった。