その後、ズボンを履き、Tシャツを着て、素早く服を着た。
「小さな女、俺の体つきに満足か?」彼は突然振り返り、わざとベッドの上の女性の物思いを中断させた。深い瞳には全て戯れの色が浮かんでいた。
「……」千雪の顔は、今や熟れたトマトに匹敵するほど赤くなっていた。彼女は布団を抱え起き上がり、素早く首を振って、男性に背を向けるよう合図した。服を着たかったのだ。
男性は全く気にせず笑った。「お前の体のどこも見ていないところはないだろう、何を恐れる必要がある?」
千雪は彼を睨みつけた。
「OK、OK」冷泉辰彦はさらに楽しそうに笑った。「5分あげるよ、俺は下で待っている」そう言って彼女を一瞥し、ドアの鍵を回して出て行った。
千雪はぼんやりと見つめ、この男性が笑うと魅力的で眩しく、そして奇妙だと感じた。この男性は一体どうしたのだろう、今日笑った回数は歴史的最高記録を作ったのではないか?
彼女が洗面を済ませて一階に降りると、冷泉辰彦はすでにダイニングテーブルに座り、新聞を見ながらトーストを食べていた。阿部さんが傍に立ち、意味ありげに彼女を見て微笑んだ。
「奥様、こちらがあなたの朝食です」そう言って笑顔で香り立つオートミールのお粥、全粒粉パン一皿、そして野菜サラダ一皿を運んできた。
「朝食を食べたら、ある場所に連れて行くよ」彼女が近づくと、冷泉辰彦は新聞から顔を上げ、神秘的に言った。その端正な顔には全くリラックスした、明るい表情が浮かんでいた。
彼女は軽く微笑み、椅子に座って静かに朝食を食べ始めた。心の中の暗い影もすっかり消え、彼の言う神秘的な場所に期待を抱いていた。
この男性は、アメリカから帰ってきてから、少し変わった。
二時間後、彼は彼女を彼が言っていた神秘的な場所に連れて行った。彼女は門の前に立ち、少し信じられない思いだった。なぜなら、彼が連れてきた場所は青山療育院だったからだ。
彼は彼女の手を引き、直接彼女を鈴木青葉の個室へと案内した。