そそくさと洗顔を済ませ、シンプルで上品なチェックのスカートに着替えて、部屋から逃げ出した。
冷泉家の人たちはとても変わっていて、食事の時間以外は皆それぞれ自分のことをして、言葉さえ交わさない。当然、冷泉邸全体も寂しく冷え切っていた。それはあの独裁的な大奥様がいるせいなのかもしれない。
朝食を終えると、彼女が知り合ったばかりの冷泉辰浩はカメラを持って急いで外出し、風景を撮りに行った。「蘭」という名の中年の美しい婦人、つまり冷泉允拓の母は、冷泉大奥様の周りでお茶を出したり水を運んだり、気遣いをしていたが、大奥様の嫌悪の眼差しに怯えて、もう一言も発することができなかった。冷泉様はもちろん忙しく外出して客人や友人に会いに行っていた……しかし、あの冷泉允拓の姿だけが見当たらなかった。