彼はちょっと黙り込んでから、言った。「これからは花の枝を折って鼻に近づけて嗅がないで。花の汁には毒があるものもある」
足を少し止めてから、また前に進んだ。なぜだか、心が少し温かくなった気がした。
冷泉辰彦は携帯を開いてみると、電源が切れていることに気づいた。電池が切れたのだろうか?電源ボタンを押すと、「ピン……」と画面が瞬時に明るくなり、バッテリー表示は満タンだった。
「辰彦、今日はイタリアンパスタを食べに行かない?」雲井絢音は彼の大きなシャツを着て、長い脚を見せながら、バスルームから出てきた。「辰彦、髪を乾かすのを手伝って」
「お前が俺の携帯の電源を切ったのか?」冷泉辰彦は彼女の甘えには応えず、携帯を手に冷たく尋ねた。
雲井絢音は髪を拭いていたタオルを下ろし、ようやく男の様子がおかしいことに気づいた。「うん、私たちの邪魔をされたくなかったから……前はこうしても気にしなかったじゃない……」