「それで彼らはどこに行ったの?」どうしてこんなことに?
「知るわけないでしょ?あの博打打ちなんて久しく見てないわよ。今頃どこかの賭け台に張り付いてるんじゃないの。春杏のことなら、最近息子を連れて隣村の水野さんに再婚したって聞いたけど……あなたたち、結局部屋に泊まるの?この村で私の民宿だけが環境いいのよ。この村を過ぎたら次の宿はないわ。それに今は一部屋しか空いてないし……」
そう言うと、二人の前で遠慮なくあくびをした。
「裏庭の小屋を見てもいいですか?」あの小屋は、彼女とおばあさんが寄り添って暮らした場所で、彼女の幼少期の思い出がある。
女性は千雪を横目で見て言った。「あれは物置だよ、何を見るっていうの。泊まるなら入りなさい、泊まらないなら帰りなさい。ぐずぐずしないで」そう言って、門を閉めようとした。
「もちろん泊まります」則安は一歩前に出て、女性が門を閉めるのを阻止した。「部屋を予約します。でも部屋はきちんと清潔にしておいてください」
「大丈夫よ、部屋はきれいに掃除してあるわ。満足してもらえるわよ。入って見てみる?」女性はすぐに笑顔に変わった。
則安は彼女を無視し、千雪を抱きながら家の中へ歩いていった。
「二階にご案内するわね。一階は私が住んでるから、ふふ」女性は鍵を持って小走りに先に立った。
二人は彼女について二階に上がると、二階の二部屋が強引に四つの小部屋に仕切られていることに気づいた。
「ここよ、窓のある部屋。中には必要な家具は全部揃ってるわ」女性は一番奥の部屋のドアを開け、口をとがらせた。「もし気に入ったなら、今すぐ家賃を払ってね。一泊五百元、鍵の保証金が百元で、合計六百元よ」
「わかりました」則安は部屋をあまり詳しく見ることなく、財布から六百元を取り出して女性に渡した。「これが六百元です。とりあえず一泊します」
女性はお金を受け取って数え、顔のしわが花のように咲いた。「じゃあ、お二人はゆっくり休んでください。何か必要なことがあれば一階に呼びに来てね。私は一階の部屋にいるから」
「はい」則安はこのうるさい女性を押し出し、苦笑いしながらドアを閉めた。必要なものは何もないだろう、必要なものは全部持ってきているのだから。