夕暮れ時、オフィスビルを出ると、藤原則安は千雪が外で彼を待っているのを見つけた。彼女はぴったりとしたベージュのかぎ針編みカーディガンを着て、同じ色系の膝丈のブーツを合わせていた。髪の毛先は少し巻き、雪のような肌に薄く化粧を施し、とても女性らしい魅力を漂わせていた。
横顔を見ると、細い肩、豊かな胸、蜂の腰、長い脚、起伏のある曲線が一目で分かり、細くて均整がとれていて、かつて子供を身ごもっていたとは全く見えなかった。
一束の真っ赤なバラが、彼女の手に抱えられていた。
彼は微笑んだ。彼女の持つ優しい美しさは、いくら見ても飽きることがなかった。
「千雪」と彼女に優しく呼びかけ、彼は彼女に向かって早足で歩いていった。端正な顔に喜びが隠しきれなかった。これが彼女が初めて自分から彼を訪ねてきたことだったのだ。