第167章

そして彼は、冷泉辰彦に対して何の負い目も感じていなかった。なぜなら、あの混蛋は千雪を奪っただけでなく、彼女を傷つけ尽くしたからだ。そんな男が千雪に幸せを与えられるだろうか?彼女を再び手に入れる資格があるだろうか?

ない。

だから、彼は千雪が新たな一歩を踏み出し、顔に笑顔を取り戻し、彼と彼女の過去の美しい時間を取り戻すことを願っていた。結局、千雪は最初に彼を愛していたのだ。千雪の心の中には彼がいる。そもそも、彼と千雪はすれ違いではなかったのだから。

そしてスイスでの4年間、千雪があの混蛋を忘れたこの4年間、彼と千雪は確かにそれを成し遂げた。彼らは心を通わせ、互いの心の中には相手しかいなかった。彼は彼女を愛し、世界中のすべてを彼女に与えたいと思うほどだった。彼は彼女を愛し、自分の命を懸けて愛することさえ惜しまなかった……