第二章 予期せぬ発見
葉山夢愛は少し慌てた様子で、急いでカードを引き出しにしまい、目を逸らしながら、適当に答えた。
「これは友達が前回ここに来た時に置き忘れたものよ。」
「友達？あなたにそんなお金持ちの友達がいるんだ？」
葉山夢愛は明らかにこの話題を避けたがっていた。
彼女は質問に直接答えず、話題を変えた。
「小雲、私はこのあと指導教員と話があるから、先に行かなきゃ。後でLineで連絡するね。」
葉山夢愛はクレジットカードについてこれ以上話そうとしなかったが。
しかし私は彼女の部屋で、すでにいくつかの高価な品物を見つけていた。
一台のアップルのノートパソコン。
一台のiPhone。
そして別にデザイナー専用のグラフィックタブレット。
これらの専門的な機器を合わせると数万元はする。貧しい女子学生が手に入れられるものではない。
このカードがどうやって葉山夢愛の手に渡ったにせよ、少なくとも田中遠三が裏で彼女と連絡を取っていることは間違いない。
別れ際に、葉山夢愛と私はLineのIDを交換した。
私は記憶を頼りに温井雅子のオフィスを見つけた。
「こんにちは、温井雅子さんはいらっしゃいますか？」
「ああ、温井さんは出張に行っていて、来週にならないと戻ってこないですよ。何か用事があれば彼女の携帯に電話していただけませんか？」
親切な同僚が電話番号を渡してくれた。
実は、私は彼女の電話番号を持っていたが、今は身分が変わり、松岡小雲の携帯を使っているので、直接会って話さないと転生のような話を信じてもらえないだろうと思った。
しかし、彼女が出張中なら、電話をかけてみるしかない。
「もしもし、どちら様ですか？」
温井雅子の声はかすれていて、長い間泣いていたことが伝わってきた。
「雅子、私よ！」
「あなた誰？」
「聞いて、荒唐無稽に聞こえるかもしれないけど、私は松岡祐仁なの…」
電話の向こうで、空気が数秒間凍りついたかと思うと、温井雅子の怒鳴り声が聞こえ、すぐに電話が切れた。
「ふざけんな！誰だよお前！そんな冗談言って死にたいのか！気違い！」
温井雅子は短気で気が荒い。彼女は親友を失った悲しみの中にいるときに、誰かが現れて自分が彼女の親友だと名乗り出た。
彼女の怒りは理解できる。だから私はもう一度忍耐強く電話をかけたが、今度は温井雅子は電話に出るなり私を罵倒し、私の電話番号をブロックした。
やはり彼女が戻ってくるまで待って、直接会って話すしかないようだ。記憶の中の住所に従って、私は松岡小雲の住まいに戻った。
それは都会の村の中にある賃貸アパートだった。
鍵を取り出してドアを開けようとしたとき、大家が入り口に立ちはだかった。
「松岡小雲、お前は三ヶ月も家賃を払っていない。これ以上払わないなら水道と電気を止めるぞ。」
「もう少し時間をください、何とかします。」
「毎回そう言うじゃないか！」
「今回は約束します、二週間以内に必ずお金をお支払いします！」
「三日だ。払わなければ部屋を取り上げるからな！」
大家は最後の通告を出し、ぶつぶつ言いながら立ち去った。
松岡小雲の生活がこれほど困難な状況にあるとは思いもよらなかった。
松岡小雲の現在の仕事は、田中遠三の会社の小さな社員に過ぎず、毎月税金などを差し引いても、手取りで十五万円はある。
しかし、彼女の明細を見ると、質素な生活をしながら、毎月のお金はある謎のアカウントに送金されていた。
ほとんど貯金がなく、時代遅れのスマートフォン、クローゼットには安価な服ばかり…
どうやら、以前の私の財産をこちらに移す方法を考えなければならない。
しかし、銀行カードはすべてゴールデン入り江の豪邸にあり、私は手に入れることができない。それに、私が松岡祐仁であることを証明する方法もない。
あれこれ考えた末、ようやく一つの方法を思いついた。
深夜、人々が静かに眠る時間を利用して、私は静かに自分のアカウントとパスワードでログインした。
Lineのプロフィール画像は、私と田中遠三が星浦三手山で撮った結婚写真だった。
彼は白いスーツを着て、ハンサムで優雅だった。
私は白いウェディングドレスを着ていた…
雪山の麓の草原で、彼は馬に乗り、情熱的に私にキスをしていた。
今でも、あの時の光景をはっきりと覚えているが、もう幸せな気持ちはない。
田中遠三、本当にあなたは私たちを殺そうとしたの？
私は指で画面をなぞり、静かにLineのプロフィール画像を真っ黒なものに変えた。
ふと、INSのリンクに目が留まった…
指先が震える瞬間、それでも田中遠三のアイコンをタップし、彼のINSを開いた。
以前彼のニックネームは「永遠の避難所」だったが、今は「最愛の人を失って」に変わっていた…
プロフィール画像も私と二人の子供の白黒写真に変わっていた。
その下には彼のここ数日の投稿があった。
三日前…
私の人生は永遠にこの日で止まってしまった！
二日前：
信じられない、信じたくない、死が私たちを永遠に引き離してしまった。
一日前：
臻一、井上、パパはごめんなさい！
妻よ、君が恋しい、一晩中眠れない。
なぜ私を連れて行かなかったの？なぜ私一人を地獄に残して、この苦しみを味わわせるの？
文章は多くなかったが、読み終わる前に私の目はすでに涙でかすんでいた。
手を伸ばして目尻の涙を拭った。
静かにLineに残っていたわずかなお金を松岡小雲のアカウントに送金した。
そしてログアウトした。
私は壁の隅に蹲り、声を上げて泣いた。
昼間は何事もなかったかのように振る舞えるが、誰もいない夜には、悲しみを思う存分に解き放つ。
泣き疲れて、いつの間にか眠りに落ちた…
翌朝、会社に着くとすぐに、深川舟一が手を後ろに組んでオフィスのドアの前を行ったり来たりしていた。
私が来るのを見ると急いで近づいてきた。
「松岡小雲！」
「深川秘書、何かご用ですか？」
「ええ！田中社長があなたに会いたがっています！」
私は少し驚いた。田中遠三が私に何の用だろう？
五十嵐良太の調査について私が知っていることが彼に発覚したのか？
それとも昨夜、元のLineにログインしたことが彼に知られたのか？