第47章 記憶が飛んだ

田中遠三は私の言葉に正面から答えず、車を発進させた後、淡々と「君は酔っているよ」と言った。

確かに私は少し飲み過ぎていた!

あの社長にサインをもらう時、彼は必死に私にお酒を勧めてきた。

私は本来少しは酒量があったのだが、彼に連続で4杯も飲まされては堪らない。

赤ワイン、アルコール度数は高くないが、飲み過ぎれば人を酔わせる。

まさに酒に酔えば本音が出るというやつだ。

人は酔っ払うと、時に言葉が制御できなくなる。

今日の夕食会の前、彼は純粋な葉山夢愛を守ると宣言していなかったか?

それなら明らかに不純な事は私がやるべきということだろう。

それなのに私がやった後で、彼は道徳的な偽善者のように私を教育してくる。

はっ、女子大生を囲っている男が、私の前で道徳観を語る資格があるのか!