最初は自分の聞き間違いかと思い、耳を澄まして再度注意深く聞いてみた。
やはり、本当に彼だった!
田中遠三の声はとても特徴的で、低くて磁性があり、とても心地よい。
この声は私が彼を知って以来、彼だけが持つ独特のもので、識別しやすく、聞けばすぐにわかる。
オフィスのドアは半開きだったが、周りには他の職員も行き来していたので、あからさまに盗み聞きするわけにもいかず、遠くから立っているしかなかった。
女性秘書が私にコーヒーを一杯淹れてきてくれた。
「お嬢さん、あちらの応接室でお待ちになってください。社長が空き次第お呼びします!」
「ああ、わかりました!」
私はコーヒーを手に取り、ソファに座った。
退屈しのぎに、窓の前に行って下を見た。
その光景に、また魂が抜けそうになった。