第86章 私が死んだら悲しむの?

「何があったの?」

私は何か良くないことが起きたと薄々感じていた。

「さっき謙吾に電話したんだ。以前記者をしていた時、現場の警察官の特集を組んだことがあって。そこで謙吾と知り合ったんだけど、彼が言うには、警察署もマハの逮捕に向かう途中だという情報を得たらしい。事故が起きたんだ。ランボルギーニとバイクが衝突して...」

沢田書人は話しながらスマホのニュースを開いた。

「もうニュースになってる、見てみろ!」

私はそれを聞いた瞬間、感覚が麻痺したような気がした。

ランボルギーニ、それは伊藤諾の愛車ではないか?

突然、伊藤諾が先ほど何度も私に電話をかけてきたことを思い出した。

私はすぐにスマホを取り出し、伊藤諾の番号にかけ直した。

相手は応答しなかった。

その後、沢田書人が差し出したスマホ画面をちらりと見ると、その場で気絶しそうになった。