「何があったの?」
私は何か良くないことが起きたと薄々感じていた。
「さっき謙吾に電話したんだ。以前記者をしていた時、現場の警察官の特集を組んだことがあって。そこで謙吾と知り合ったんだけど、彼が言うには、警察署もマハの逮捕に向かう途中だという情報を得たらしい。事故が起きたんだ。ランボルギーニとバイクが衝突して...」
沢田書人は話しながらスマホのニュースを開いた。
「もうニュースになってる、見てみろ!」
私はそれを聞いた瞬間、感覚が麻痺したような気がした。
ランボルギーニ、それは伊藤諾の愛車ではないか?
突然、伊藤諾が先ほど何度も私に電話をかけてきたことを思い出した。
私はすぐにスマホを取り出し、伊藤諾の番号にかけ直した。
相手は応答しなかった。
その後、沢田書人が差し出したスマホ画面をちらりと見ると、その場で気絶しそうになった。