「何を言ったの?」
私は自分の耳を疑い、もう一度尋ねた。
葉山夢愛はため息をつき、頷いた。
「そうよ、全部私のせい。もし私が田中兄さんに頼んで、私のいとこを家政婦として紹介していなかったら、事態はここまで発展しなかったわ。」
「あなたが竹田佳子を紹介したの?」
「そうよ!私のいとこは実はとても良い人なの。そうでなければ、田中兄さんに紹介したりしなかったわ!」
葉山夢愛は事の顛末を説明した。
これで、私の葉山夢愛への好感度はゼロになった。
田中遠三、あなたって本当にすごいわね!
4年前に浮気したのはまだしも、愛人の親戚を私のそばに送り込むなんて。
私を信用していないの?
それとも、ずっと私を陥れる機会を窺っていたの?
しかし、私が反応する間もなく、伊藤諾は怒り心頭で部屋から飛び出してきた。
一蹴りで葉山夢愛の前のテーブルをひっくり返した。
茶碗と急須が床に落ち、粉々に砕けた。
葉山夢愛の手にあった茶碗も倒れ、お茶が全身にかかり、彼女は慌てて立ち上がった。
「何をするの?」
伊藤諾は怒りに震えながら彼女を指さして問いただした。
「お前、頭おかしいんじゃないのか?なぜ竹田佳子を松岡家に紹介したんだ?」
葉山夢愛は一瞬呆然としたが、すぐに弁解した。
「私のいとこはそんな人じゃないわ。火事を起こしたのは彼女じゃない。聞いてなかったの?あなたたちが誤解してるのよ、彼女はそんな人じゃないわ。」
「諾、もういいわ!落ち着いて、竹田佳子は既に白状したわ。彼女じゃなくて、田中遠三がやったのよ。」
私は急いで伊藤諾を制止した。
しかし伊藤諾はまだ怒りが収まらないようだった。
彼は怒りを全て葉山夢愛にぶつけた。
「出て行け、今すぐ消えろ!」
葉山夢愛は顔色が青ざめ、携帯を取って慌てて外に向かった。
伊藤諾がまだ追いかけようとしたので、私は彼を引き止めた。
「少し落ち着いてくれない?竹田佳子がやったんじゃなくて、田中遠三が…」
伊藤諾はまだ怒りが収まらず、納得できないようだった。