56章 田中遠三の悪意

「何を言ったの?」

私は自分の耳を疑い、もう一度尋ねた。

葉山夢愛はため息をつき、頷いた。

「そうよ、全部私のせい。もし私が田中兄さんに頼んで、私のいとこを家政婦として紹介していなかったら、事態はここまで発展しなかったわ。」

「あなたが竹田佳子を紹介したの?」

「そうよ!私のいとこは実はとても良い人なの。そうでなければ、田中兄さんに紹介したりしなかったわ!」

葉山夢愛は事の顛末を説明した。

これで、私の葉山夢愛への好感度はゼロになった。

田中遠三、あなたって本当にすごいわね!

4年前に浮気したのはまだしも、愛人の親戚を私のそばに送り込むなんて。

私を信用していないの?

それとも、ずっと私を陥れる機会を窺っていたの?

しかし、私が反応する間もなく、伊藤諾は怒り心頭で部屋から飛び出してきた。