銀行の警備員?その言葉を聞いた途端、全身に冷や汗が走った。
先日、銀行で不動産権利証を受け取った時、あの警備員が私の後ろをずっと必死に追いかけてきたんだ。
逃げ切ったと思っていたのに、まさか会社まで追いかけてくるなんて。
もしかして、私のことがバレてしまったの?
内心は動揺していたけれど、少なくとも田中遠三に対応する時は冷静さを保っていた。
「田中社長、彼らは私に何の用があるんですか?」
「戻ってきたら分かるさ!」
田中遠三は少し怒っているようで、数言葉を言うとすぐに電話を切った。
私は振り返って伊藤諾を見た。
彼もちょうど私を見つめていて、その瞳には明らかに心配の色が浮かんでいた。
「今夜の集まりには行けるの?」
「もちろん、いい知らせを待っていてね!」
伊藤諾を心配させたくなかったので、このことは彼に話していなかった。