第108章 ラスの眼差し

銀行の警備員?その言葉を聞いた途端、全身に冷や汗が走った。

先日、銀行で不動産権利証を受け取った時、あの警備員が私の後ろをずっと必死に追いかけてきたんだ。

逃げ切ったと思っていたのに、まさか会社まで追いかけてくるなんて。

もしかして、私のことがバレてしまったの?

内心は動揺していたけれど、少なくとも田中遠三に対応する時は冷静さを保っていた。

「田中社長、彼らは私に何の用があるんですか?」

「戻ってきたら分かるさ!」

田中遠三は少し怒っているようで、数言葉を言うとすぐに電話を切った。

私は振り返って伊藤諾を見た。

彼もちょうど私を見つめていて、その瞳には明らかに心配の色が浮かんでいた。

「今夜の集まりには行けるの?」

「もちろん、いい知らせを待っていてね!」

伊藤諾を心配させたくなかったので、このことは彼に話していなかった。