第107章 心が砕けた

伊藤諾はエレベーターのボタンを押し、私をちらりと見た。「あなたはいつも他人のことばかり気にかけるの?」

「そうじゃなきゃ何?あなたのことを気にかけろっていうの?」

「私のことを気にかけたら死ぬの?」

「あなたはこうして元気に目の前に立っているじゃない。顔色も良くて、大きな病気なんてなさそうだし、私があなたのことを心配する必要なんてある?」

「私に隠れた病気がないってどうして分かるの?」

「精神病とか?」

彼と少し言い合っているうちに、エレベーターが止まった。

後ろにいた医師は彼の同僚らしく、私たちが口論しているのを見て親指を立てた。出て行く前にもう一言。

「伊藤医師、朝っぱらからイチャイチャしてるんですか?」

伊藤諾は説明もせず、むしろにこにこと頷いた。「そうだよ!」