伊藤諾はエレベーターのボタンを押し、私をちらりと見た。「あなたはいつも他人のことばかり気にかけるの?」
「そうじゃなきゃ何?あなたのことを気にかけろっていうの?」
「私のことを気にかけたら死ぬの?」
「あなたはこうして元気に目の前に立っているじゃない。顔色も良くて、大きな病気なんてなさそうだし、私があなたのことを心配する必要なんてある?」
「私に隠れた病気がないってどうして分かるの?」
「精神病とか?」
彼と少し言い合っているうちに、エレベーターが止まった。
後ろにいた医師は彼の同僚らしく、私たちが口論しているのを見て親指を立てた。出て行く前にもう一言。
「伊藤医師、朝っぱらからイチャイチャしてるんですか?」
伊藤諾は説明もせず、むしろにこにこと頷いた。「そうだよ!」