第213章 布局

なぜかわからないけど、私は田中遠三を見るたびに、心が落ち着かなくなる。

彼が去った後、私は両手でテーブルを支え、頭の中は混乱していた。

私はコーヒーを一杯淹れた。

自分を落ち着かせるよう強いた。

オフィスを一周歩いて、やっと田中遠三が言っていたことを思い出し、すぐに伊藤諾に電話をかけた。

彼は電話に出ると、私が口を開く前に、非常に厳しい口調で言った。

「後で電話するよ、今は忙しい」

たったこれだけの言葉で、電話を切った。

以前なら、私が彼に電話をかけたとき、どんなに忙しくても、少なくとも会社の状況について尋ねてくれたものだ。

明らかに、今の状況は彼が身動きできないほど重要なことに違いない。

そこで、私は温井雅子に電話をかけ、鈴木誠一の状況を聞いてもらうよう頼んだ。

温井雅子は期待通りだった。

10分で答えを返してくれた。

「ちょうどいいタイミングで聞いてくれたわ。鈴木誠一は今、伊藤家で対処法を考えているところよ!」

「一体何があったの?」

「以前、伊藤お父さんは南部大学の副学長だったんだけど、今、公金横領で告発されているの。金額がかなり大きくて、鈴木誠一の話によると、10年以上の刑になるかもしれないって。知ってのとおり、伊藤お父さんはもう60代で、体調も良くないし、心臓病もあるから、もし刑務所に入れば命がないかもしれない」

温井雅子の言葉には心配が滲んでいた。私はそれを聞いて心が冷え込んだ。

「伊藤お父さんはそんな人じゃないと思うけど、本当にそんなことをしたの?」

「鈴木誠一が事情を調べたところによると、当時あるプロジェクトが急を要していたけど、上層部のある幹部が承認を出さずに止めていたんだって。それで第三者が進行を早めたくて、その幹部に賄賂を贈ろうとして、お金を用意したの。でも第三者はその幹部と面識がなかったから、伊藤お父さんに届けてもらったんだって。伊藤お父さんは確かにその件に関わったけど、当時はそれが果物やタバコの箱だと思っていて、大金だとは知らなかったらしいわ。とにかく、彼は知らないうちに関わってしまって、お金はその幹部の手に渡ったの...」

「それなら、その幹部を告発すればいいじゃない」