第214章 彼が提示した信頼できない条件

あの淡い微笑みは、暗闇に差し込む一筋の光のようだった。

人に希望と自信を与えてくれた。

私は頷いた。

「伊藤おじさんを見舞いに来ました。何か手伝えることがあれば、言ってください」

伊藤諾は何も言わず、ただ鈴木誠一からタバコを一本もらった。

彼は廊下に立ったまま、そのタバコを吸い終えた。

私には分かった、彼が必死に自分の感情を隠していることが。

「わかった!」

「あちらには警察が立っているから、伊藤おじさんのところへは行けないね。また今度来るよ!」

「送るよ!」

病院を出るとき、伊藤諾は私の隣に立っていた。

彼はずっと黙ったまま、頭を下げて何かを考えていた。彼の全身が一種の放心状態にあるのを感じることができた。

エレベーターの中で、温井雅子が尋ねた。

「伊藤社長、伊藤おじさんの病気は大丈夫なんですか?」