あの淡い微笑みは、暗闇に差し込む一筋の光のようだった。
人に希望と自信を与えてくれた。
私は頷いた。
「伊藤おじさんを見舞いに来ました。何か手伝えることがあれば、言ってください」
伊藤諾は何も言わず、ただ鈴木誠一からタバコを一本もらった。
彼は廊下に立ったまま、そのタバコを吸い終えた。
私には分かった、彼が必死に自分の感情を隠していることが。
「わかった!」
「あちらには警察が立っているから、伊藤おじさんのところへは行けないね。また今度来るよ!」
「送るよ!」
病院を出るとき、伊藤諾は私の隣に立っていた。
彼はずっと黙ったまま、頭を下げて何かを考えていた。彼の全身が一種の放心状態にあるのを感じることができた。
エレベーターの中で、温井雅子が尋ねた。
「伊藤社長、伊藤おじさんの病気は大丈夫なんですか?」