彼が緊張すればするほど、私の心の中ではますます明確になった。自分は正しい場所を見つけたのだと。
「田中遠三、あなたは世の中で私だけが黒い過去を持っていて、あなたには何もないと思っているの?」
田中遠三はそれを聞くとすぐに問い詰めた。その言葉には明らかに緊張が滲んでいた。
「この秘密を知っているのは、私の妻だけだ!お前はいつまで隠し通せると思っている?」
「でたらめだ!このことを知っている人はたくさんいるわ!松岡家の人間で、あなたの秘密を知らない人がいるの?」
「松岡雄介が教えたのか?」
「もう無駄話はしたくないわ!あの日記の発表は取り消した方がいいわよ。そうしないと皆が苦しむことになる!『追い詰められた兎も噛みつく』っていう言葉があるでしょう。私を追い詰めないで!」
私の口調もかなり強気だった。田中遠三を押さえつけようとしていた。
しかし田中遠三はそれを聞くと冷笑して、
「俺は誰の脅しにも屈したことはない。お前は今すぐ青木山から離れた方がいい。さもないと、今日やったことで一生後悔することになるぞ」
「あら、怖いわね!」
私はそう言って電話を切った。強気な態度を見せていたが、これらの言葉を言い終えた後も、背中は冷たく感じていた。
温井雅子はまだ山道で上山する車を探していたが、長い間探しても見つからなかった……
そして彼女は走ってきて私に尋ねた。
「田中遠三と話はついたの?」
「ついてないわ!彼は私が山に登ることを禁じると脅してきただけよ!」
「ええ、どうしよう?」
「気にしないで!まずは山に登りましょう!」
「車がないわ!」
「小道を回って上がりましょう!」
山道は私が想像していたよりもはるかに歩きにくかった。私と温井雅子は40分近く回り道をして、ようやくその古い庵の前に到着した。
この庵は青い山々の間に位置し、青々とした木々に囲まれ、環境は清らかで、まるで俗世を離れた高人の修行の場のようだった。
遠くから木魚を叩く音が聞こえ、それに伴って経を唱える声がかすかに届いてきた。
「えっと、ここはどこなの?私たちはここに行くの?」
温井雅子は汗を拭きながら私に尋ねた。私はうなずいて、
「田中遠三の叔母さんがここにいるの!彼女は出家した人よ!松岡雄介から聞いたけど、田中遠三は小さい頃から叔母さんに育てられたんだって」