私はかがみ込んで、葉山夢愛のスマホを拾い上げた。
そして、ロープを取り、葉山夢愛の両手を縛り、彼女を下の船底へと引きずり込んだ。
彼女の指紋でスマホのロックを解除した。
実は、私は元々葉山夢愛を誘拐するつもりはなかった。
彼女は私の計画には全く含まれていなかった。
しかし、彼女が自ら門前に現れたからには、戦略を変えるしかない。
ロック解除後。
私は葉山夢愛のスマホを調べ始めた。
驚いたことに、葉山夢愛は田中遠三とのメッセージのやり取りをたくさん保存していた。
一つ一つ見ていくと。
基本的にはすべて葉山夢愛が送ったもので、田中遠三からの返信はほとんどなかった。
大部分は葉山夢愛が田中遠三を誘い出そうとするもので、田中遠三の返事はほとんどが時間がない、というものだった…
メッセージから見ると、二人の関係はとても単純で、親密さはなく、恋人同士とも言えないほどだった。
だから葉山夢愛がさっきあんなに怒っていたのも無理はない。
しかし、その後ある通話記録を見つけて、私は大きなショックを受けた。
火災があった日の夜…
彼女は田中遠三に3回電話をかけていた。
毎回数秒の通話で、これは直接的な証拠となる。
火災の夜、田中遠三が急いで会いに行った相手は、葉山夢愛だったのだ。
証拠がここにあり、私の体は寒気で震えた。
これは二つのことを示している。田中遠三は放火に関与した可能性が高い。もし関与していなければ、どうして火災の直前に出ていったのか。
もしかしたら、これはすべて彼と葉山夢愛が共謀したことかもしれない。
考えれば考えるほど辛くなり、心はますます暗くなっていった。
怒り、心の痛み…
この心の痛みは一生経っても癒えないだろう。
胸が刃物で切られるような痛み…
私は必ず田中遠三に代償を払わせる!
しばらくして、スマホの着信音が私を現実に引き戻した。
田中遠三からの電話だった。
私は出なかった!
しばらく鳴った後、田中遠三からメッセージが届いた。
「スマホに少し不具合があって、今直したところだ。さっき電話してきたけど何かあったのか?」
葉山夢愛が田中遠三になりすまして私との約束に来たのなら、私も葉山夢愛になりすまして田中遠三を騙すことができる。
せいぜい目には目を、だ!
私はスマホを持ってソファに座った。