第349章 彼は再審を望んでいる

私は本当に田中遠三が存在しなかったことにすることなどできない。

彼と10年間結婚し、二人の子供を育て、一緒に事業を起こし、今日に至るまで。

私たちのお互いに対する理解は、骨の髄まで刻み込まれている。

忘れようと思っても忘れられるものではない……

温井雅子は私の肩を叩き、アドバイスをくれた。

「今日から楽しいことをしましょう」

「どんな楽しいこと?」

「私に任せて、私が手配するから!」

「いいわ!」

その日から、毎日仕事が終わると、温井雅子は私をショッピングに連れて行くか、

運動に連れ出し、毎日自分を疲れ果てさせてから、マッサージを受けに行き、そうすれば朝まで熟睡できた。

翌日の朝、天藤会社の正面玄関。

入るとすぐに見覚えのあるシルエットが目に入った。

なんと葉山夢愛だった。