私の印象では、田中遠三は松岡家の人々を徹底的に憎んでいて、松岡家の全員が死ねばいいと思っていました。
彼がどうして全財産を私に残すことがあり得るでしょうか?
私の疑問に対して、山本誠明は非常に確信的な答えを出しました。
「間違いありません。こういうことでどうして間違えることがあるでしょうか?私はプロの弁護士です。私の専門性を信じてください!」
「もし私の記憶が正しければ、田中遠三にはまだ叔母がいて、彼女は法定相続人です。」
「理屈の上ではそうですが、彼の叔母は出家しています。私も彼女と話し合いましたが、彼女はいかなる財産も受け取らず、ただ田中遠三の遺骨を彼女に渡してくれれば良いとのことでした。」
私はまだ躊躇していました……
この遺産は贈り物のように感じられました。
田中遠三が意図的に私に残したもので、その目的は私に一生彼のことを覚えておかせるためだと。
実は私は欲しくありませんでした。
しかし山本誠明はさらに私を説得しました。
「被害者側への賠償はすでに清算済みです。もしあなたがこれらの財産を受け取らなければ、国に没収されることになります。」
「どうでもいいわ、没収されればいいじゃない。」
「でも、よく考えてください。これには紅葉マンション、臻一株式会社、そして三橋グループの株式、さらに松岡邸も含まれています。本当に要らないのですか?要らないと言えば、これらは他の人に管理されることになりますよ。」
山本誠明のこの指摘で、私は瞬時に目が覚めました。
そうだ、なぜ受け取らないのか。
臻一株式会社、紅葉マンション、そして大部分の財産は、私と田中遠三の婚姻後の財産です。
彼が死んだ今、これらは本来私が相続すべきものです。
さらに、三橋グループと松岡邸も松岡家のものであり、私の手に渡ってこそ、叔母に返すことができるのです。
そう考えると、私は迷わずこれらの書類に署名しました。
署名が終わると、山本誠明はようやく重荷から解放されたかのように安堵のため息をつきました。
「任務がついに完了しました!大成功です!数日後、いくつかの法的書類を郵送であなたの手元に届けます。」
「ああ、わかりました!」
山本誠明は書類を片付け、ドアの所まで行ったとき、突然振り返って私を見ました。