第356章 まだページをめくれるのか

温井雅子がマハという三文字を言及した時、私はしばらくの間、この人物が誰なのか思い出せなかった。

頭の中で10分ほど考えてようやく思い出した。彼はゴールデン入り江の放火事件の容疑者だった。

当時、ゴールデン入り江の放火事件には二人の容疑者がいた。一人はマハで、もう一人はカールヘアーだった。

カールヘアーは事故で亡くなり、マハは意識不明の状態だった。

しかし、この事件は裁判にかけられることはなかったが、私の心の中では黒幕は田中遠三だと確信していた。

結局、この二人は田中遠三の部下だったのだから。

この時、マハの意識が戻ったことについて、私はあまり気にしていなかった。

「どうでもいいわ!」

「ゴールデン入り江の放火事件に興味がなくなったの?」

「何か意味があるの?田中遠三はもう死んだわ!」

「経緯を知りたくないの?」

「必要ないわ、知りたくない……」

温井雅子も頷いて同意した。「そうね、もう過去のことよ!あなたも新しい生活を始めないと。」

そう、私は新しく始めなければならない……

心の結び目が解けたのだから、生活は続けなければならない。

まだ処理しなければならないことがたくさんある。

田中遠三は三橋グループと松岡家の邸宅を私に譲ってくれた。私は時間を見つけて所有権の移転手続きをした。

その後、海外に行って叔母の五十嵐麗子を連れ戻し、さらに五十嵐お母さんも再雇用した。

五十嵐麗子の体調はますます悪くなっていた……

特に松岡文雄の死を聞いた後、彼女は肝腸寸断の思いで泣いた。

しかし、三橋グループと松岡家の邸宅が戻ってきたと聞いて、彼女の感情はようやく落ち着いた。

特に田中遠三がすでに刑に服していると知った後、彼女の気持ちは徐々に良くなった。

「松岡小雲さん、あなたは私の姪の松岡雲の親友だけど、あなたが私たち松岡家のためにしてくれたこと全て、本当に感動したわ。」

「おばさん、悲しまないで。後で病院に連れて行って数日入院してもらって、それから三橋グループの株式をすべてあなたに移転するわ。」

「ありがとう!」

五十嵐麗子が帰国した後、私は彼女を病院に連れて行った。

私は毎日時間を作って病院に彼女を見舞い、付き添った。

彼女の病室は松岡晴彦のすぐ隣で、時間があれば、彼女はよく松岡晴彦に付き添っていた。